
12月13日、Appleは「Apple 丸の内」において、Today at Appleセッション「Swift Student Challenge 2025の入賞者をお祝いしよう!」を開催した。
本セッションは、Appleが世界中の学生を対象に毎年実施しているアプリ開発コンテスト「Swift Student Challenge」の入賞者を称え、その取り組みや成果を共有することを目的としたイベントだ。参加者はSwift言語と「Swift Playgrounds」を用いて、独自のアイデアを形にしたアプリやインタラクティブな体験を制作し、完成度や創造性が評価される。
今回のセッションでは、「Swift Student Challenge 2025」で日本から入賞した5名の学生が登壇。自作アプリの紹介や開発の背景、制作過程での工夫などが語られたほか、来場者は開発者本人からのレクチャーを受け、実際にアプリを体験することができた。本稿では、その様子をレポートする。
参加者は開発者の解説を受けながらアプリを体験

イベントの冒頭では、入賞者たちがそれぞれのアプリを紹介した。
- モンガ蓮緒奈さん(広尾学園高等学校):将来的に目が見えにくくなる可能性のある人の練習や、点字への理解を深めるためのアプリ。点字を音で学べる。
- 濱本太輝さん(熊本県立大学):日本の伝統的な「花札」を題材にしたアプリ。誰でも気軽に楽しめるのが特徴。
- 石塚アルセニさん(広尾学園高等学校):人によって異なるお金の使い方に着目し、グラフやチャートなどのビジュアルで視覚的に分析できる家計管理アプリ。
- 杉山丈太郎さん(慶應義塾大学):折り紙に切り込みを入れるだけで美しい模様ができる体験をデジタルで再現したアプリ。
- 石渡利柱さん(名古屋大学):AR(拡張現実)を活用し、人工衛星の設計から打ち上げ、ミッション遂行までを体験できるアプリ。



アプリ紹介後には、参加者全員にiPadが配布され、各開発者のブースを回りながら実際にアプリを体験できる時間が設けられた。開発者本人が使い方をレクチャーし、その場で質問に答える形式で進行し、学生から年配の参加者までがそれぞれの視点でアプリを楽しむ様子が印象的だった。



開発者によるトークセッションでは、開発の舞台裏や参加者とのQ&Aが実施

イベント後半のトークセッションでは、入賞者たちが開発の舞台裏やアイデアの着想源、AIとの向き合い方について率直に語った。
アプリの実装は短期間で集中的に行う一方、アイデアの構想や技術習得に長い時間をかけた例もあり、日常の気づきや自身の専門分野への関心が作品に反映されていたという。たとえば、満員電車のドアの点字から着想を得たり、宇宙工学への興味をアプリに落とし込んだ例など、多彩な発想が披露された。
開発においては全員がAIを活用しており、コード生成だけでなく学習や発想を支える存在として位置付けている点が印象的だった。一方で、体験の心地よさやデザインの細部など、人の手で磨き上げる部分こそが価値になるとも強調された。また、審査の観点では、3分以内で魅力が伝わる一貫した体験設計やアクセシビリティへの配慮、そして独自の情熱が作品に反映されているかどうかが重要なポイントとして挙げられた。

さらに、登壇者のバックグラウンドは多様で、初めてのアプリ制作という学生もいれば、すでにApp Storeに複数のアプリを公開している経験者もいた。こうした多様な経験の学生が同じ舞台で競い合い、互いの努力や成果を称え合える点も、Swift Student Challengeならではの魅力として語られた。
イベントの締めくくりとして、来年のチャレンジに向けた準備イベントが1月に開催されることや、アプリ制作におけるエラーの解決やアイデアの相談ができるDiscordサーバー「Swift Student Community Japan」への参加が呼びかけられた。
入賞者インタビュー:継続と周囲からの刺激が入賞のきっかけに


イベント終了後には、5名の入賞者へのグループインタビューが行われた。入賞に至るまでの道のりはそれぞれ異なるが、共通して語られたのは「あきらめずに続ける力」と「周囲から受ける刺激」の重要性だ。
濱本さんと杉山さんは、過去の落選や挑戦を糧に、今回ついに念願の入賞を果たした。濱本さんは「入賞の知らせを受け取ったときは、詐欺を疑ったほど驚いた。Apple Parkに行かせてもらったりと貴重な体験もできて、この経験をこれからの開発へのモチベーションにつなげていければ」と振り返り、杉山さんは「2024年に落選した際の悔しさをバネに、今回再び入賞できた。大学の広報誌で大きく取り上げられたり、色々なところで祝ってもらって嬉しかった」と語る。継続して取り組んできた努力が確かな成果となり、周囲の反応にも大きな変化が生まれた。


モンガさんと石塚さんは、同じ学校・同じクラスに通う友人同士だ。昨年の「Swift Student Challenge 2024」でも入賞を遂げたモンガさんに誘われ、石塚さんも参加を決意した。学校に専門的な指導者がいない環境の中で、2人は自ら調べ、互いのアイデアを批評し合いながら、身近なライバルであり仲間として切磋琢磨してきた。

石渡さんは、過去の入賞ニュースへの憧れからSwift Student Challengeに初挑戦し、見事に入賞となった。今回の入賞が自信となり、その後はJAXAやNASAが主催するプログラミングコンテストでも賞を獲得。ひとつの挑戦が飛躍のきっかけとなった。

イベント後半に行われた体験会では、一般参加者との交流を通じて、画面越しの検証だけでは気づけなかった「手応え」や「課題」が浮き彫りになった。
モンガさんは、原文を手で隠された状態で、「この点字を読める?」と参加者から質問され、学校の友人からは出なかった根本的な問いに新鮮な驚きを得たという。同じように石渡さんや石塚さんも、同世代以外からの多様な反応に触れ、幅広い層の意見を聞く大切さを学んだほか、来年へのさらなる意欲につながったと語った。
濱本さんは、体験会の中で「花札をプレイしたことがある?」という質問をしたときに、やはり自身の予想通り認知度が低いことを肌で感じる良い機会になり、文化を継承するアプリの意義を再確認したという。
また、杉山さんは今回の体験会で、アプリで作った切り紙をリアルの紙で実際に作るというパフォーマンスを行なっており、その際に参加者たちが喜んだり面白がる様子を見て、リアルの切り紙が持つ「体験の強さ」を改めて痛感。アプリの完成度を見つめ直すきっかけになったと語った。

インタビューの締めくくりに、モンガさんはアクセシビリティをテーマに掲げ続ける理由を「人のためになるものを作りたいから」と語った。自分自身の課題や興味から出発し、それをテクノロジーで解決しようとする姿勢は、5名全員に共通する熱量だ。世界に認められた若き開発者たちにとって今回の入賞はゴールではなく、早くも次の創造へと視線を向けているようだった。




