ハロウィーンでも秋分の日でも、ましてや大安吉日でもなんでもない、ただのプレミアムフライデーの10月26日に、東京の渋谷ではAppleユーザーにとって、二つのとてもビッグなイベントが行われていた。
まずは、新型iPhoneの「iPhone XR」の発売。そして同時に、昨年11月からずっとリニューアル作業が行われていた「Apple 渋谷」が、ついに渋谷の中心地に帰ってきたのだ。
「Apple 渋谷」 は、「Apple 新宿」 「Apple 京都」 に次ぐ、国内Apple Store再編計画の第3店舗目。従来のデザインから「タウンスクエア」型と呼ばれる「Apple Storeが街とそこに棲まう人々と繋がる」新しいコンセプトの店舗に生まれ変わった。
今回、筆者は「iPhone XR」の発売イベントを兼ねた「Apple 渋谷」のリニューアルオープンセレモニーに参加することができたので、同記事でセレモニーの様子と実際の店舗の内部構造などを詳細にお伝えできればと思う。
スタッフが来店客にかける言葉は「おかえりなさい」
オープン数日前の様子
「Apple 渋谷」 は、渋谷の公園通りの一角に位置する。渋谷駅から代々木公園方面に歩いて行くと、徒歩5分ほどで渋谷MODIが見えてくるのだが、そこからさらに坂道を上がって行くと右側に「Apple 渋谷」が見えてくる。
位置は2005年に誕生した時と変わらず。雑居ビルの間に挟まれた細いビルであるため、中のスペースはやや手狭だが、それでも大きな存在感を放つのがAppleブランドの力。
リニューアルオープンは10月26日の午前8時。当日は「Apple 渋谷」をいち早く体験したい方や限定Tシャツなどのノベルティが欲しい方たちで800人近くの行列が発生した。筆者が知る限り、列は「Apple 渋谷」から原宿側に向けて、最終的には国立代々木競技場近くまで伸びた。
当日の天気はあいにくの曇り。ビルを抜ける柔らかい風があったため、薄着だった方はやや寒く感じていたようだ。行列には 「Apple 新宿」 や 「Apple 京都」 のオープニングセレモニーの際に配布されたTシャツを着ていた人たちも。
オープン10分前、3階のベランダに店舗スタッフたちが登場し、歓喜の叫び。階下にいる行列の人々と喜びを分かち合った。
記念すべきリニューアルオープン、そして「iPhone XR」発売の瞬間。オープン前にカウントダウンが開始され、ベランダから降りてきたスタッフの方々と行列の先頭の方達で店舗前は大盛り上がり。
筆者は朝4時台から行列に並んでいたこともあり、先頭から50人以内に入ることができた。そのため、最上級の興奮の中、オープンとほぼ同時に入店することができた。
入店の際は恒例のハイタッチ。ただし、今回のハイタッチはリニューアルオープンということもあり、スタッフの方々からお客さんに発せられた言葉は「おかえりなさい!」だった。「Apple 渋谷」 にたまにお世話になっていた筆者にとっては、その言葉がなんだかとても嬉しく感じた。
リニューアルオープン前日夜の様子
「Apple 渋谷」 の店内の話に移っていこう。同店舗は全4階構造になっていて、従来から展示フロア数が2から3に増えている。
1階は主にiPhoneやiPad、Macなどの主力製品の展示。展示されている製品は、すべて実際に手にとって試すことができるようになっている。各種ヘッドホンやイヤホン、iPhoneケースの展示棚も1階に並ぶ。
入り口付近には、同日発売の「iPhone XR」も展示されていたこともあり、この日の一番人気は最上位モデル「iPhone XS/XS Max」ではなく、やはり「iPhone XR」だった。上記は「iPhone XR」のコーラルカラー。
2階には、Apple Watchのバンドを試せる机や、各種製品を一堂に並べてApple製品の連携機能が体験できる机などが配置。こちらも 「Apple 新宿」 や 「Apple 京都」 でも見られる展示スタイルで、タウンスクエア型のApple Storeを何度も見ている筆者にとっては特に新鮮味はなかった。
ただし、2階には「Apple 渋谷」の最大の見どころである「触れるAppleロゴ」がある。店舗の外から見えるように、すべてのAppleストアに掲げられているAppleロゴだが、「Apple 渋谷」 の場合はなんと直接触ることができる。
もちろん筆者も触ってきたが、筆者だけでなく多くのユーザーがセルフィー写真を撮影していた。ここは間違いなく、「Apple 渋谷」 の名物スポットになるだろう。
机の長さは他のタウンスクエア型Apple Storeのものより長い
3階には、Appleの無料講座「Today at Apple」が開催できるスペースが用意されている。ディスプレイの前に長机が用意されており、店舗のディスプレイと各自が持ち寄ったApple製品を使って、実際に作業をしながら、Apple製品を活用する方法を勉強することができる。早速、オープン初日にもセッションが行われており、何人ものユーザーが熱心に講座を聞いていた。
テーブルの脚には電源が内蔵されている
ちなみに、「Apple 渋谷」 にはタウンスクエア型の最大の特徴とも言える「フォーラム」や巨大な「6Kビデオボード」が存在しない。理由に関してはスタッフの方も分からないということだったが、おそらく店舗面積が手狭であることが原因ではないか、とのこと。その分、展示スペースに余裕を持たせた作りになっているため、ゆっくりと製品を見ることができるようになっている。
3階にはこれまでになかった「コレクション」という展示棚が用意されている。こちらは、iPhoneやiPad、Apple Watchなどの各種アクセサリを並べた展示で、各アクセサリのカラーなどの相性をチェックすることができる。
3階フロアは以前にiTunes株式会社だったこともある
余談だが、この壁面に貼られているiPadやiPhoneはすべて実機を使っているとのこと。決してモックアップなどではなく、とても贅沢な自社製品の使い方となっている。本物を使用しているため、iPhoneケースなど実際の着け心地を確かめるには持ってこいの展示スペースとなっている。
「コレクション」 の隣には「ホーム」と呼ばれる展示棚もある。これはAppleのHomeKitを活用したスマートホームのイメージを説明する場所になっており、iPadの「ホーム」アプリを使って自宅環境が大きく変化する様がイメージできるようになっている。
例えば、朝のシチュエーションにはカーテンが自動で開き朝日が差し込み、夜にはカーテンが閉まり、自動的に暖色系のライトが点灯するなど。各種HomeKit対応アクセサリとApple製品を使うことで、ホームオートメーションが可能であることをアピールしている。この展示棚は「Apple 新宿」にも存在したのだが、ビデオボードが4枚になるなど地味なアップグレードを遂げている。
各階の移動には、Appleの本社施設にある「Steve Jobs Theater」を彷彿とさせる螺旋(らせん)階段を使用する。以前の「Apple 渋谷」も階の移動には螺旋階段だったのだが、今回のリニューアルに伴って螺旋階段も現代版に進化。従来のガラス製から人工大理石に足場が変わっている。
ただし外側の手すりは「Apple 京都」のようなスベスベの人工大理石ではなく合成素材(?)が使われており、高級感に関しては「Apple 京都」にやや劣る感じもする。
ちなみに、展示フロアのさらに上にある4階には、商談用の部屋が用意されているが、こちらは「Apple京都」と同様に一般ユーザー向けには開放されていない。
また、開放されていないという点では3階のベランダも同様。このベランダは前述した通りオープン前にスタッフの方々が歓喜の叫びをあげていた場所だが、残念ながら普段は開放されておらず、一般ユーザーは立ち入ることができないという。
なんのために用意されたのかはよく分かっていないが、今回のような「特殊なイベント」でのみスタッフ向けに開けられるのではないかと、よく仲良くさせてもらっているAppleスタッフの方は推測していた。
「Apple 渋谷」 は想像以上に大きく生まれ変わった。残念ながら「Apple 渋谷」は、京都の街をイメージした碁盤目のファザードや、ネオンをイメージした「Apple 新宿」のロゴや曲面ガラスや日本在来種の木が使用されるなどの、「渋谷だけにしかない特徴」 は確かに少ないかもしれない。
ただし、新しい展示スタイルがあったり美しい螺旋階段があったり、細部へのこだわりが感じられるストアデザインであることは実際に訪れたらハッキリと理解することができるはずだ。
スタッフの一人に「Apple 渋谷の一番好きなところはどこ?」と聞いたのだが、その方は新しい展示方法でも螺旋階段でも、またもや「触れるAppleロゴ」でもなく「開放感」と答えてくれた。その人が言うには、前の「Apple 渋谷」は他の店舗に比べて狭いイメージが強かったが、今回のリニューアルで正面がすべてガラスになったことでよく街が見えるようになり、さらには店内も明るくなったと言う。
エレベータ前で談笑する店舗スタッフの方と来店客
筆者もそれを聞いて深く納得した。これまでは以前の「Apple 渋谷」のデザインをさも当たり前のように感じていたのだが、今にして思えばやや閉塞感があり、街と店舗は別世界に分かれていたように思う。
しかし、新コンセプトのタウンスクエアは「街との一体感」を重視する。旧「Apple 渋谷」を知っているからこそ、今回のリニューアルは新コンセプトの意味を再確認するにはまさに最適だったのかもしれない。
配布された記念Tシャツとピンバッジ
ちなみに、「Apple 京都」 に比べるとやや狭く感じる「Apple 渋谷」だが、陳列数に限って言えば実は「Apple 京都」よりも多い。これは、ユーザーに多くの商品を見てもらうため、また様々な人種が行き交う渋谷ならではの多様なニーズに応えるためでもあるという。もし、Appleの製品の中から一番のお気に入りを探したいなら、「Apple 渋谷」 がオススメかもしれない。
新コンセプトに合わせた新しい展示スタイル。螺旋階段に加えて、触れられるAppleロゴ。見どころが意外と多い「Apple 渋谷」 、渋谷に行った際は是非とも一度はお立ち寄りいただきたい。
そして、最後に。おかえりなさい、「Apple 渋谷」 ーー。
住所・電話番号 | 営業時間 |
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〒150-0041 東京都渋谷区神南1-20-9 公園通りビル TEL:03-6670-1800 |
月曜日~日曜日 10:00 a.m. ~ 9:00 p.m. |