Appleが「レアアース」供給網を強化。MP Materialsと5億ドル規模の契約を締結

Appleは、米国内のレアアース(希土類)供給体制の強化策として、MP Materialsとの協業でテキサスとカリフォルニアに磁石製造・リサイクル施設を導入する。

Appleは7月15日、アメリカ唯一の統合型レアアース生産企業であるMP Materialsとの複数年契約を発表した。テキサス州フォートワースにあるMP Materialsの新工場「Independence」から、Apple製品向けの米国産ネオジム磁石を調達する計画だ。その規模は総額5億ドルにのぼる。

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米国内での製造から再資源化までを一貫体制で

MP Materialsは今後、Apple専用の製造ラインをテキサスの工場に導入し、ネオジム磁石の生産能力を大幅に増強する予定だ。完成すれば、米国で製造された磁石は国内外に出荷され、世界中のApple製品に使用される。これにより、MP Materialsの全体的な生産能力も底上げされる見込みだ。

AppleとMP Materialsは、製造に必要な技術者の育成にも注力する。新工場の稼働に合わせて数十人規模の高度製造・R&D職が新設されるほか、専門的なトレーニングプログラムも提供される。

この契約には、カリフォルニア州マウンテンパスに全く新しいリサイクル施設を建設する取り組みも含まれている。使用済みの電子機器や産業廃棄物から回収したレアアースを再処理し、Apple製品に再利用する。

Appleは以前よりこの分野で先行しており、2019年のiPhone 11以降、Taptic Engineをはじめとする自社製品の磁石にリサイクルレアアースを導入してきた。現在では、Apple製品に使われる磁石のほぼすべてに100%リサイクル素材が使用されている。

カリフォルニアでのリサイクル施設については、両社は5年近く共同で技術開発を進めてきた。新施設では、使用済み製品や産業廃棄物から回収されたレアアース素材を、Appleの品質基準を満たすレベルまで再生可能にする計画だ。

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米国製造への巨額投資、そして「循環型技術」への挑戦

今回の5億ドル投資は、Appleが今後4年間で米国経済に5,000億ドル超を投資すると表明している大型計画の一環でもある。同社はすでに、半導体製造や気候変動対策など複数分野で米国内への投資を拡大中だ。

世界的にレアアースの供給が不安定な状況が続く中、Appleのようなグローバル企業が自前のサプライチェーン構築に乗り出す意義は大きい。スマートフォンやタブレット、ラップトップ、ARデバイスといった各種ハードウェアの製造にとって、ネオジム磁石は小型で強力な磁力を持つキーパーツ。特に今回のように、製造から再資源化までを米国内で完結させる体制は、経済安全保障や環境対策の観点からも注目される。

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(画像:Apple)

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