現地時間11月1日、高機能な画像編集ソフト 「Pixelmator」 の開発会社であるPixelmator Teamは、Appleによる買収契約に署名したと発表した。Pixelmator TeamやAppleからは買収の金額などについての詳しい条件は開示されていないが、買収を完了するには規制当局の承認が必要になる。
「Pixelmator」 がAppleによる買収に署名
Pixelmator Teamはリトアニアのビリニュスに本社を置くソフトウェアメーカーで、2007年の設立以来、17年間にわたり 「Pixelmator」 をはじめとするソフトウェアの開発を行ってきた。
Appleの買収により、「Pixelmator」 の各種アプリの機能がApple純正アプリに組み込まれたり、新たなApple純正のペイントアプリが登場する可能性もあるが、Pixelmator Teamは現時点で 「Pixelmator Pro」 「Pixelmator for iOS」 「Photomator」 アプリに重大な変更はないとしており、引き続きApp Storeで現状の料金のままアプリが利用できるものとみられる。
Pixelmator Teamは、プレスリリース内で 「過去17年間のサポートをしてくれた素晴らしいユーザーに心から感謝したいと思います」 と述べ、「(今後の) エキサイティングなアップデートにご期待ください」 と締めくくっている。
なぜ、Appleは 「Pixelmator」 の買収を行うのだろうか。その理由は、自社のエコシステムの強化により競合他社に対して優位性を保ちたいからだろう。特に、自らが主戦場のひとつであるグラフィック関連の分野において他社に引けを取らない戦略が必要だからだ。
Pixelmator Teamは、多くのユーザーが知るとおりApp Storeで人気の画像編集ツールを手がける会社だ。「Pixelmator Pro」 「Pixelmator for iOS」 「Photomator」 の3つのサービスが展開されており、競合のサービスとしてはAdobeの「Photoshop」やSerifの「Affinity Designer」などがあるが、Pixelmatorが得意とするのはAppleプラットフォームに特化していること、そして使いやすさとパフォーマンスに焦点を当てているところで、Appleと同様の価値観を持っている会社とも言える。
そのPixelmatorを買収することで、Appleは先行する他社の写真編集アプリの高機能化に対抗する狙いがあるとみられる。特に、Adobeは自社の生成AI「Adobe Firefly」を自社サービス内に積極的に展開しており、AIを用いたクリエイティブの創造、編集をアピールポイントのひとつとして提供している。
一方の、PixelmatorもAIを駆使した機能は提供しているものの、Adobeのような生成AIを用いた創造というよりかは、これまでの手動による編集作業の延長線上としてAIを用いているところが大きい。つまり、Appleは生成AIを利用した写真編集機能を欲してPixelmatorを買収したわけではないことになる。
Pixelmator Teamは、今回の買収によって 「Pixelmator Pro」 「Pixelmator for iOS」 「Photomator」 の各アプリの機能面、料金体系等に変更はないとしているため、しばらくは「Logic Pro」「Final Cut Pro」と同様に、App Storeで他のサードパーティアプリと並んで展開されるとみられる。将来的には「写真アプリ」内の写真編集機能として 「Pixelmator」 の機能が提供されたり、プロ向けの写真編集ツールとして、自社サイトやApp Store内で 「Pixelmator Pro」 を紹介するようになるのかもしれない。
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(画像:Pixelmator Team)