Apple、App Storeの経済規模は186兆円に達したと発表。WWDC25前にエコシステムの価値を強調

Appleは来週の「WWDC25」を前に、同社のアプリ配信プラットフォーム「App Store」の経済的インパクトを強調するレポートを発表した。

ボストン大学のAndrey Fradkin教授とAnalysis GroupのJessica Burley博士による最新の経済調査に基づくデータでは、App Storeが2024年に支えた商取引額は1.3兆ドル (約186兆円) に達したという。

この1.3兆ドルにも及ぶ商取引を構成するのは、主に「物理的な商品・サービスの売上」「デジタル商品・サービス」「アプリ内で配信される広告収益」の3つだ。そして、Appleはこの1.3兆ドルにもおよぶ取引のうち、90%以上について手数料を徴収していないことを強調している。

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レポートによると、App Storeを通じた「デジタル商品・サービス」の取引額は1,310億ドルで、主な牽引役となったのはゲームアプリやAdobe系を含む写真・動画編集アプリだ。

一方、「物理的な商品・サービスの売上」は1兆ドルを超え、主にフードデリバリーや食料品注文の増加が寄与している。そして、「アプリ内で配信される広告収益」についても1,500億ドルに達した。これは、無料または低価格のアプリの提供するための重要な要素として機能している。

これら3つのカテゴリの市場規模は、2019年からの5年間で倍以上に成長。特にフィジカル商品・サービスの成長率は+162%と群を抜き、コロナ禍以降に定着したオンライン消費スタイルがApp Store経由でも根付いたことがうかがえる。なお、アプリ内広告収益は+131%、デジタル商品・サービスは+109%の成長を記録している。

App Storeの利用者はグローバルで週平均8億1300万人に達している。40以上の通貨と200の地域に対応した課金・税務インフラも完備されており、利用者にとってもデベロッパーにとっても重要な市場になっていることを示している。

日本の国家予算 (一般会計) が約112兆円 (2024年度)、Appleの年間売上高が約45兆円 (2023年度) であることを考えると、この200兆円という数字がどれだけ大きな規模かは簡単に理解できるだろう。

今回のプレスリリースは、来週開催される年次開発者会議 「WWDC25」 の開催前にあわせて公開されたものである点に注目しておきたい。Appleは同プレスリリースを通じて、Appleのエコシステムの価値をアピールする狙いがあるとみられる。

その背景にあるのは、おそらく昨今のEpic Gamesとの法廷闘争やEUのデジタル市場法 (DMA) による厳しい規制圧力だろう。全体の経済規模に比して、Appleが収益を得ているのはごく一部にすぎないという事実は、規制当局や裁判所に「プラットフォームとしての効率性に欠ける」と映る可能性がある。「巨大な取引が行われているにもかかわらず、Appleが得ている収益は一部にすぎず、そのギャップが課金の公平性をめぐる規制当局の懸念につながる可能性がある」という意味だ。

実際、現在の17〜30% (中小企業は10〜15%) という手数料体系が不公平だという声が根強い。NetflixやSpotifyのように事実上Appleの決済システムを回避しながらもApp Store上に居続けるプレイヤーも存在するのが現状だ。

一方のAppleは、手数料が信頼できる決済システム提供の対価であり、安全性確保に必要であると主張している。Epic Games訴訟では、アンチステアリング行為が違法と判断されたものの、30%の手数料自体が市場支配力を証明するものではないとされている。そして今回のプレスリリースでは、こうした規制圧力のなか、App Storeが単に手数料を徴収する場ではなく、デベロッパーが成長し、ユーザーが革新的なアプリを享受できる広大な経済圏であることを強調したかったと思われる。

こうした複雑な収益構造や手数料体系は、長年にわたって行われてきた議題のひとつで、巨大プラットフォーマーにまつわるホットな話題でもある。「WWDC25」 ではAIや開発者向けツールの強化に加えて、App Storeの運営方針にも何らかの言及があるとみられる。基調講演では次世代のOSが最大の注目ポイントとなりそうだが、こういった観点においても注目しておきたい。

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(画像:Apple)

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