
Adobeは、同社の年次イベント「Adobe MAX 2025」において、主力動画編集ソフト「Premiere」の大規模アップデートとYouTubeとの戦略的パートナーシップを発表した。注目は、YouTubeとの連携強化と、AIを活用した高度なトラッキング機能の公開だ。
モバイル版PremiereとYouTubeショートの統合
今回のAdobe MAX 2025のタイミングで、AdobeはYouTubeとのパートナーシップを発表。Premiereのモバイル版(iPhone向け)とYouTubeショートの連携により、YouTubeショート制作のための新たなコンテンツ作成スペース「YouTubeショート用に作成」が近日中にPremiereのモバイル版アプリに登場する。
クリエイターはYouTubeショートのコンテンツをリミックスしたいとき、YouTube上の「Adobe Premiereで編集」と書かれたバッジをタップすることで、Premiereのモバイル版アプリ内にある「YouTubeショート用に作成」に直接移行し、即座にリミックスを行うことができる。
モバイル版Premiereは無料アプリながら、スタジオ品質のオーディオ、AI生成効果音、無制限トラックによる高精度編集、Adobe FireflyによるAIコンテンツ生成をサポートする。クリエイターは専用エフェクトやトランジション、タイトルプリセットを使ってコンテンツをリミックスしたり、カスタマイズテンプレートを共有して新たなトレンドを生み出したりできる。完成した動画はワンタップでYouTubeショートに投稿可能だ。
YouTubeのスコット・シルヴァー氏(エンジニアリング担当VP)は、この統合によりクリエイターが編集機能をフル活用しやすくなり、世界中のオーディエンスにリーチできるとコメントしている。
デスクトップ版PremiereのAI編集機能
今回の発表に合わせて、これまで「Premiere Pro」として提供されてきたデスクトップ版ソフトは、モバイル版と同じ「Premiere」に製品名が統一され、今後は「Premiereファミリー」として展開されることになる。
デスクトップ版Premiereでは、マスク機能や素材選別の効率化が大幅に改善された。
注目は「オブジェクトマスク(Beta)」だ。映像内のオブジェクトをマウスオーバーするだけで自動認識し、高速かつ正確にトラッキングできる。途中のフレームからトラッキングを開始しても、前後のフレームを適切に処理可能で、人物の背後にテキストを配置するなど高度な編集も容易になった。
楕円形マスクもグラデーションやベジェ曲線を活用でき、キーフレーム単位での修正が可能になったことで、従来の修正によるずれ問題が解消されている。また、9月に買収した「Film Impact」の技術を組み込むことで、モザイクやRGBスプリットなどのエフェクトも簡単に適用できる。
さらに、編集前の素材選別も効率化された。オーディオ検索では、例えば「Grill」と入力すれば、ジュージューという調理音を含む素材をリストアップ可能だ。類似フレーム検索では、同じ人物やシチュエーションのクリップを瞬時に抽出できる。Frame.io V4との統合も進み、ストックパネルも統合されている。
これらの機能強化により、Premiereはモバイル・デスクトップともに、AIを活用した高速かつ直感的な動画制作環境へと進化した。クリエイターは短尺コンテンツから本格映像制作まで、より効率的に質の高い動画を制作できる環境を手に入れることができるようになる。
(画像提供:Adobe)
