
Adobeは、映像編集ソフト「Premiere Pro」「After Effects」の最新版(バージョン25.5)を発表した。今回のアップデートは、蘭アムステルダムで9月12日より開催される「IBC 2025」に合わせて提供が開始される。
今回のアップデートで最大の目玉となるのが、Premiere Proに追加される90種類以上の新しいエフェクト、トランジション、アニメーションだ。
映像編集の現場では、ひとつのトランジションやエフェクトが作品全体の印象を大きく変えることは珍しくない。今回の拡充によって、そうした「決め技」となる表現の幅が一気に広がることになる。
これらの新機能は、Adobeが買収したFilm Impact社のライブラリをシームレスに統合することで実現したものだ。追加費用は不要で、Premiere Pro単体でプロ仕様のモダンなトランジションや映画風なエフェクトを利用できるようになっている。
Premiere Proの進化:GPU加速と「Surprise Me」ボタン

追加されたエフェクト群には、映画的なディゾルブやブラー、スタイリッシュなワイプ、さらには万華鏡のような大胆なトランジションまで含まれるほか、グリッチやVHS風のダメージ表現、カオス系トランジションなど、ラフな雰囲気を演出する効果も揃う。
さらに、3Dトランジションの新コレクションも用意され、表現の幅が大きく広がった。

すべてのエフェクトはGPUでリアルタイム処理され、ドラッグ&ドロップ直後にプレビューできる。レンダリングを待つ必要はなく、調整を繰り返しても再生が途切れない。
特筆すべきは「Surprise Me」ボタンだ。クリック1つで無限のバリエーションをランダム生成でき、思いもよらないアイデアを瞬時に試せる。

また、タイムライン再生も大幅に強化された。クリップをドラッグする際にオーディオ波形やマーカーがリアルタイムで表示されるようになり、編集の精度が向上。再生のレスポンスも改善されており、Adobeの目標は「再生ボタンを押して0.1秒以内に映像が動き出すこと」だという。
さらに、NVIDIA Blackwell GPU上でのH.264/HEVC 10bit 4:2:2再生や、Canon Cinema RAW Light、ARRIRAW HDEのサポート拡充など、ハイエンド映像制作に対応する技術的進化も盛り込まれている。
After Effectsも効率化へ

今回のアップデートでは、Premiere ProだけでなくAfter Effectsも進化している。新機能「クイックオフセット」によって、複数のレイヤーやキーフレームを一度にずらして均等配置できる。これまで一つひとつ調整する必要があった作業が一気に効率化される。
また、コンポジションパネルのズームやプレビュー再生がよりスムーズになり、キャッシュ処理の改善で作業レスポンスも向上した。細かいピクセル単位の調整を繰り返すモーションデザイナーにとっては大きな恩恵となるだろう。
今回のアップデートは、編集者やクリエイターが日々の作業で感じる「小さなストレス」を減らし、表現に集中できる環境を整えることに主眼を置いたアップデートだ。Adobeは今後もユーザーの声を反映し、映像制作の効率と表現力を高める進化を続けるとしている。
(画像提供:Adobe)