
2025年8月1日から「Adobe Creative Cloud」が大幅に改定される。従来の「コンプリートプラン」は「Creative Cloud Pro」に名称変更されるほか、機能を絞った廉価プラン「Creative Cloud Standard」も登場する。
本稿では、「Adobe Creative Cloud Pro」と「Standard」両プランの違いをわかりやすく解説し、どのような用途・ワークフローにどちらのプランが適しているのかを整理していく。
機能面の違い|主な違いはAI機能とモバイル環境。全アプリ利用は共通

両プランともに、PhotoshopやIllustrator、Premiere Proなどを含む20種類以上のデスクトップアプリケーションに対応する点は共通している。PC上での制作が中心なら、どちらのプランでも基本的な制作環境に大きな差はない。
プラン名 | Creative Cloud Standard | Creative Cloud Pro |
---|---|---|
デスクトップアプリ Photoshop、Illustrator、InDesign、Premiere、Acrobatなど20種類以上のアプリ | ◯ | ◯ |
モバイルおよびwebクリエイティブアプリ | iPad版/iPhone版「Photoshop」は基本機能のみ。 WEB版「Photoshop」やiPad版「Illustrator」は 利用不可など制限あり (詳細は別の表を参照) | フルアクセス |
標準の生成機能 Photoshopの生成塗りつぶしなどの 機能を使用して画像やベクターを生成 | 25クレジット/月 | 無制限 |
プレミアム生成機能 Fireflyのテキストから動画生成や音声を翻訳、 Premiere Proの生成延長などの機能を使用して、 ビデオとオーディオを生成 | ✕ | 4,000クレジット/月で、 5秒の動画を最大40本生成、 または最大14分の動画と音声を翻訳 |
Firefly ボード (beta) Firefly ボード (beta) で 複数のコンセプトボードを作成可能 | ◯ | ◯ |
アドビ以外の生成AIモデルを使用する選択肢 OpenAI GPT、Google Imagen、 Veo、Fluxなどを含む | ✕ | ◯ |
クラウドストレージ Creative Cloudドキュメント、 Lightroomの写真とビデオ、 Adobe Expressファイル、 その他を含む | 100GB | 100GB より大きなストレージ プランのオプション |
料金 | 【個人版】 ・月々プラン:10,280円/月 ・年間契約 (月々払い):6,480円/月 ・年間プラン (一括払い): 72,336円/月 ※学生・教職員版はなし | 【個人版】 ・月々プラン:14,480円/月 ・年間契約 (月々払い):9,080円/月 ・年間プラン (一括払い):102,960円/年 【学生・教職員版】 ・年間契約 (月々払い):4,180円/月 ・年間契約 (一括払い):50,160円/年 【グループ版】 ・年間契約 (月々払い):11,990円/月 ・年間契約 (一括払い):143,880円/年 |
ただし、モバイルやWebアプリの対応状況とAI関連機能には明確な差がある。
「Pro」はiPad版IllustratorやWeb版Photoshopなど、スマートデバイス向け機能も制限なく利用できる一方で、「Standard」ではこれらが利用不可もしくは基本機能に限定される。
アプリ名 | Creative Cloud Standard | Creative Cloud Pro |
---|---|---|
Acrobat | ◯ | ◯ |
Adobe Express | ◯ | ◯ |
Adobe Fresco | ◯ | ◯ |
Adobe Podcast | ◯ | ◯ |
Illustrator web (Beta) | ◯ | ◯ |
Photoshop Express | ◯ | ◯ |
Premiere Rush | ◯ | ◯ |
Adobe Firefly | 標準の生成機能 | ◯ |
Lightroom モバイル版 | 基本機能 | ◯ |
Photoshop iPad版 | 基本機能 | ◯ |
Photoshop iPhone版 | 基本機能 | ◯ |
Photoshop web版 | ✕ | ◯ |
Illustrator iPad版 | ✕ | ◯ |
Lightroom web ギャラリー | ✕ | ◯ |

また、生成AIの利用についても、「Pro」では標準AIが無制限、プレミアムAIは月4,000クレジットまで利用できるのに対し、「Standard」では標準AIが月25クレジットまでプレミアムAIは利用不可となる。
この「生成クレジット」の差は、Photoshopでの画像生成やPremiereでの動画編集を日常的に行うユーザーにとっては非常に大きいだろう。
プラン名 | Creative Cloud Standard | Creative Cloud Pro |
---|---|---|
標準の生成機能 Photoshopの生成塗りつぶしなどの 機能を使用して画像やベクターを生成 | 25クレジット/月 | 無制限 |
プレミアム生成機能 Fireflyのテキストから動画生成や音声を翻訳、 Premiere Proの生成延長などの機能を使用して、 ビデオとオーディオを生成 | ✕ | 4,000クレジット/月で、 5秒の動画を最大40本生成、 または最大14分の動画と音声を翻訳 |
価格の違い|Proは生成AI時代の「全部入り」プラン。Standardは価格重視の選択肢

価格にも大きな違いがある。年間契約(月々払い)ベースで見ると、Proは月9,080円、Standardは6,480円。差額は月2,600円、年間で約3万円の開きとなる。
Proはまた、OpenAIのGPTやGoogle Imagenなどの外部AIモデルの選択も可能となっており、Adobe Fireflyと組み合わせてより柔軟な生成が可能だ。
一方、Standardは生成回数が限られているため、たとえば画像1枚を生成するのに何度も試行錯誤するような用途では物足りない。追加クレジットの購入も可能だが、月100クレジット以上使うならProのほうが経済的だ。
学生・教職員向けプランはある?

これまでAdobe Creative Cloudのコンプリートプランで「学生・教職員向けプラン」を利用してきた人の中には、今後も「Creative Cloud Pro」と「Creative Cloud Standard」で引き続き学生・教職員向けプランを使いたいと思っている人もいるかもしれない。
しかし、「Pro」には学生・教職員向けプランが用意されるものの、「Standard」には学生・教職員向けプランが用意されていない点に注意が必要だ。この結果、機能制限のある「Standard」よりも「Pro」の学生・教職員向けプランのほうが安いという逆転現象が生じている。
プラン名 | Creative Cloud Pro | Creative Cloud Standard |
---|---|---|
学生・教職員向けプラン | あり | なし |
税込価格 | 【学生・教職員版】 ・年間契約 (月々払い):4,180円/月 ・年間契約 (一括払い):50,160円/年 | 【個人版】 ・月々プラン:10,280円/月 ・年間契約 (月々払い):6,480円/月 ・年間プラン (一括払い): 72,336円/月 ※学生・教職員版はなし |
そのため、現時点で学生・教職員であれば、「Pro」の学生・教職員版を利用したほうが、機能面でも価格面でもお得といえる。
Pro Plusプランって何?
アドビの公式ヘルプページを見ていて、「Creative Cloud Pro Plus」という名称のプランを見つけて「なんだこれ?」と思った人もいるかもしれない。解説すると、これは法人向けの「グループ版」プランの上位モデルにあたるプランだ。
法人向けプランとしては、新たに「Creative Cloud Pro グループ版」と「Creative Cloud Pro Plus グループ版」という名称のプランが用意され、上位の「Pro Plus」の方はAdobe Stockを無制限に利用できたり、IP補償 (アセットごとに最大10,000USD) が利用できる。
個人向けプランとはまた別のプランになるため、法人での利用を考えている人以外はこちらのプランは気にしなくてOKだ。
まとめ:Proか、Standardか。選ぶ基準は “AI機能の利用頻度”

選択の基準は意外とシンプルだ。生成AIを本格的に使うかどうか。そして、iPadやWeb版のアプリを日常的に使うかどうか。
- Photoshopでの生成塗りつぶしを毎日使う
- Premiere Proで生成延長や音声翻訳を活用している
- Fireflyの高精度モデルや外部AIを使って試行錯誤を繰り返す
- モバイルアプリを使って自宅以外でも本格的な作業がしたい
このいずれかに当てはまるなら、Creative Cloud Proを選ぶべきだ。一方で、AIはたまに使う程度で、モバイルやWeb環境もそこまで重視しないというユーザーにとっては、Standardでも大きな支障はない。主要なデスクトップアプリはすべて含まれており、コストパフォーマンスは高い。
すでにコンプリートプランを契約中のユーザーは、8月1日以降に自動的にProへ移行される。値上げに納得できない場合は、更新前にStandardへ切り替える選択肢もある。自分の制作スタイルと照らし合わせ、過不足のないプランを選びたい。
(画像:アドビ)