アドビ新社長が事業戦略発表。新ビジョンは 「心、おどる、デジタル」

6月29日、アドビは事業戦略説明会をオンラインで開催。日本市場における新たなビジョンを、今年4月に代表取締役社長に就任した神谷知信氏が説明し、デジタルトランスフォーメーション(DX) をどのように支援していくのかなど、アドビの今後の展開が示された。

今回の事業戦略説明会にて神谷氏から発表されたのは、アドビ株式会社の新たなビジョン 「心、おどる、デジタル」 。デジタルを通じて最高の体験を提供するだけに留まらず、デジタルでワクワクする世界を構築していくというものだ。

「心、おどる、デジタル」 は “Digitalize” “Delight” ”Amaze“ “Foster” の4つの要素で構成されるとのこと。Digitalizeはペーパーレス化による革命、Delightはデータをみきわめ体験で繋ぎ、AmazeはAdobeのクリエイティブツールを使い、これまでの常識を覆す原動力になること。Fosterは、次世代のデジタル人材の育成に向けて、誰でも利用できるデジタル環境を整えること。

このビジョンを実現するためには、“テクノロジー” “エコシステム” “人材と組織” の3つの軸が必要とし、これらは単独ではなくすべて連携して動いていくことが大事と、神谷氏は説明する。

テクノロジーはアドビがもつクラウドサービス。「Adobe Creative Cloud」 「Adobe Document Cloud」 「Adobe Experience Cloud」 の3つのソフトウェア、そしてこれらのサービスを支えるAI(人工知能)である 「Adobe Sensei」 などを紹介した。

エコシステムは、アドビのビジョンに賛同する2800社以上のISV(独立系ソフトウェアベンダ)とテックパートナー、7,700社以上のSIerや代理店と協力すること。日本の顧客に対して最大クオリティのものを提供したいとする。

最後は、人材と組織。専門性をもつ顧客を支援するチームを組織し、リテール部門はもちろん、法人分野ではSMB (中堅中小企業)、エンタープライズ、教育・政府といった顧客向けに専門営業およびCSM部門を設置。

アドビの業績はとても好調で見通しも明るい。3年後のTAM (Total Addressable Market:獲得可能な最大市場規模) は2019年11月時点で12兆8000億円程度だったのが、2020年12月段階では14兆7000億円と大幅に引き上げている。昨今のコロナパンデミックの中、オンラインでクリエイティブなものを作りたいと思うユーザーが増えたことに加えて、アフターコロナの新たなデジタルムーブメントにも期待できるとの見方だ。なお、最大の市場はやはり米国だが、第2の市場は日本とのこと。

アドビは、デジタルトランスフォーメーション(DX)のコンサルティングにも力を注ぐ。神谷氏は、国内におけるテレワーク化が進んでいないことを指摘。その原因のひとつとして挙げているのが、紙をベースにした作業が多いこと。もし、これをデジタル化することができればもっとテレワークが進む。そこでアドビは紙ベースのドキュメントをどのようにデジタル化していくのかという点に着目し、戦略・方針策定から開発設計、実装、検証、活用推進や成果創出まで、データとクリエイティブな視点から一気通貫で支援していくとしている。

Adobe Acrobat DC

紙で行うあらゆる業務をPDF上でデジタル化するソフトウェア。PDFファイルの編集はもちろん、校正や押印もできる。

すでにクリエイティブ分野において十分な地位を確立しているアドビだが、今回は更なる成長を求めてクリエイティブ分野におけるさらなる浸透を目指しつつ、同時にDX分野の支援など積極的に進めていく方針であることが示された。新社長のもとで、さらなる飛躍を遂げようとする今後のアドビの動向に注目だ。

アドビ株式会社
代表取締役社長 神谷知信氏
2021年4月に、アドビ株式会社の代表取締役社長に就任。日本市場における 「Experience Cloud」 「Creative Cloud」 「Document Cloud」 の3つのクラウドビジネス事業のすべてを統括する。社長就任前は、デジタルメディア事業の製品および販売戦略をふくむ事業全体を統括。2014 年10 月入社以来、デスクトップからクラウド、サブスクリプション化へとアドビのデジタルトランスフォーメーションをリードしてきた。

関連:アドビが日本にクリエイティブツールのサブスクリプションモデルを普及させるまで

アドビ入社前の2012年〜2014年は、株式会社ディーアンドエムホールディングス(現サウンドユナイテッド) にて、アジア太平洋および中東地域マネージングディレクターとしてセールスマーケティング、カルチャーの変革を通じて収益とEBITDAの成長をけん引。2012年以前に勤務していた日本AMD株式会社では、マーケティングや営業の要職を歴任した後、シンガポールに赴任しASEAN及びオセアニア地域を統括した。

その後日本に戻り、対日本大手メーカーの戦略グローバルアカウントセールスバイスプレジデントとして、南北アメリカ、EMEA、APAC、日本の営業チームを統括。それ以前には、デルジャパン (現デル・テクノロジーズ株式会社) にて、セールスなど複数の部門を牽引したあと、エンタープライズマーケティング部門をリードし、サーバ市場初となる国内シェアの1位獲得に貢献した。

青山学院大学法学部国際私法学科卒業。スタンフォード大学にてエグゼクティブプログラムを習得。趣味はマリーンスポーツ全般と旅行。公私ともに多くの国を訪れ、休暇の際は家族や友人との旅行を楽しんでいるとのこと。

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