米サンタバーバラに拠点を置くワイヤレススピーカーのパイオニア「Sonos」が近いうちに上場する。
現地時間6日、米の各大手メディアはSonosが上場を申請したことを報じた。上場先はベンチャー向け市場のNASDAQ、ティッカーシンボルは「SONO」になる予定だ。
SonosがNASDAQへ上場
Sonosは、2002年に誕生したオーディオハードウェア企業。主にワイヤレススピーカー製品を開発しており、最近ではスマートスピーカーにも力を入れている。
例えば、人工音声アシスタント「Amazon Alexa」や「Googleアシスタント」が利用できるスマートスピーカー「Sonos One」が昨年10月に発売した(Googleアシスタントは年内に対応予定)。
また、「Sonos Beam」というスマートサウンドバーも今年7月に発売する。こちらはテレビやディスプレイの前に置くことで迫力のある音を提供することができるだけでなく、人工音声アシスタントが搭載されておりスマートスピーカーとして活用することもできる製品。ハイクオリティながら、とてもユニークな商品を作ることで定評があるのがSonosだ。
スマートスピーカー「Sonos One」
今回の新規上場で、Sonosは1億ドル(約110億円)を調達する計画。しかし、米証券取引委員会の規則で支払う経費などを含めた場合、実際に得られる金額はこれよりも少なくなる可能性があることに注意が必要だ。ちなみに、上場によって同社の市場価値は25億~30億ドルほどになる見込み。
IPO申請に伴い、Sonosの内情が明らかになっている。まずは直近6ヶ月の決算内容についてだが、売上高は6億6570万ドルで、前年同期比(2017年)から18%増加。当期純利益は1,310万ドルで、こちらは前年から14%減少しているという。
最近は実店舗の展開も開始しており、ニューヨークやロンドン、ベルリン、中国は上海などに専門店を構えている。主に欧米で人気の高いブランドだが、収益の半分は米国以外で得ているという。また、収益性を高めるために従業員の約6%にあたる96人を削減したことが明らかになっている。
非上場企業ながら年間収入が10億ドルを超える大企業で、作っている製品などから、AppleやGoogle、Amazonといった大手プレーヤーたちが最大のライバルと言える。実際、Googleのスマートスピーカー「Google Home」やAmazonのスマートスピーカー「Amazon Echo」が競合製品で、これらと真っ向から競争していく必要がある。これについては、Sonosは目論見書の中で「リスク」であると認めている。
ただし、Sonosには他のライバル企業にはない「魅力」がある。Sonosの製品はどれかひとつのプラットフォームに依存しないものが多く、さらに値段もそこまで高くない。
例を挙げるならば、先ほど紹介した「Sonos One」や「Sonos Beam」が最適だろう。スマートスピーカーといえば音楽配信サービスが利用できるのが普通だが、「Sonos One」はGoogle HomeやAmazon Echoでは利用できない「Apple Music」が使える。さらに、まだ対応はできていないが近いうちに、人工音声アシスタント「Alexa」の代わりに「Googleアシスタント」を使うことも可能になる。
また、これほど高性能でありながら価格も199ドルと安い。AppleのHomePodが379ドルで販売されているため、もしHomePodを買わなければSonos Oneを2台買うことができる。これを魅力に感じない人はいないだろう。
まもなく発売予定の「Sonos Beam」
「Sonos Beam」はAppleのマルチルームオーディオ機能「AirPlay 2」に対応するなど最新の機能をいち早く使うことができる。Appleの純正品でさえ、Apple TVとHomePodでしか利用することができないため、Appleの新製品の登場を待たずして、Sonosの製品を買ってしまう人もいるかもしれない。
これらの戦略はユーザー獲得に寄与しているはずだ。実際、筆者もSonosの製品を使っているし、米国にいる友人や家族も使っている。そして、実際に使っている人はSonosの製品に満足していることが多く、AppleやGoogle、Amazonと対等に戦うことは十分に可能だろう。
Sonosによると、今年3月末時点で同社の製品を利用している家族は700万ほどで、これらの家族で使用されている製品の数は1,900万にのぼる。また、ユーザーは1ヶ月70時間のコンテンツをSonosスピーカーで消費するとのこと。音楽やラジオを聞くことが主だとは思うが、その中にはスマートスピーカー利用時の時間も含まれるはずだ。
ちなみに今回の上場の主幹事は、モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックス、アレン・アンド・カンパニーが引き受けることになっている。上場時期はまだ明らかになっていない。