先月、Appleは米カリフォルニア州で自動運転車の公道テストを実施するための認可を取得。先月末あたりからは実際に公道でテストを行っている様子が目撃されている。
Appleがテストを行っているのは自動運転車そのものなのか、それとも自動運転のためのソフトウェアなのかはまだ不明だが、Appleは自動運転車のみならず、もっと大きな目標を視野に入れて動いているとBusiness Insiderが伝えている。
自動運転車の開発はあくまで通過点、真の目的は交通プラットフォーム上でのエクスペリエンスを構築すること
UBSのアナリストであるSteven Milunovic氏によると、Appleは自動運転車の開発を行っているが、それはあくまで通過点に過ぎず、最終的には自動運転車が普及した後の交通プラットフォーム上でのエクスペリエンスの構築まで視野に入れているという。
例えば、自動運転車は車の制御が全て自動で行われる仕組みになっているので、搭乗者は誰一人として運転する必要がなくなり、目的地までの時間を自由に使うことができるようになる。
この際に求められるのが、エンターテイメントやコミュニケーション、仕事用のアプリケーションだ。Appleはすでに「Apple Music」や「iWorks」、「FaceTime」などのアプリを様々な製品向けにリリースしており、これらを提供できるポテンシャルを持っている。
また、車内にはナビゲーションシステムやWi-Fi、ブロードバンド接続に加えて、それらを動かすための独自のOSが必要になってくるが、Appleの技術を持ってすればそれらの構築は十分に可能だ。
というのも、Appleは家中のスマート家電をアプリで制御する「Home Kit」をすでに開発しており、来月の「WWDC 2017」では「Google Home」のようなホームスピーカーを発表するとも言われている。
Business Insider曰く、これらの技術を交通プラットフォームに持ち込むことは決して難しいことではない。また、Teslaの車内にある大きなディスプレイをAppleが見逃すわけがないとも述べている。なぜなら、Appleは「iPad」や「CarPlay」のようなタッチスクリーン製品を最も得意としているから。
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そもそもAppleが自動車市場に参入したい理由は大きく分けて2つある。まず1つは、AppleはすでにIT業界やヘルスケア業界を主戦場としているが、Appleほどの大企業がさらに成長を続けるためにはより大きな業界への参入が必要になる。
そこでAppleが選んだのが、5兆ドル~15兆ドル(約560兆円~1,700兆円)もの大規模な市場を持つ自動車市場。その規模はIT業界やヘルスケア業界に比べると圧倒的に大きく、成功すればAppleの成長に必ずや貢献してくれるはずだ。
また、もう1つの理由はAppleが主要なセンサーや運転、マッピング技術などの専門知識をすでに構築しているから。これは自動車市場への参入ハードルを下げることができる。
このふたつの理由からAppleは自動車市場への参入を決定した、とMilunovic氏は分析している。
Appleは以前から「Titan (タイタン)」と呼ばれる大規模な自動運転車のプロジェクトを立ち上げていると噂になっていたが、昨年9月には同プロジェクトに関わっていた大量の従業員を解雇。
これにより「Titan」プロジェクトは凍結したという予想もあったものの、いざ蓋を開けてみれば開発が続けられていたことが判明。Appleは諦めてはいなかったのだ。
今回の話を踏まえると、Appleが目標としているのは自動運転車の開発だけではない。移動中の時間をユーザーが有意義に使えるように、Appleが持っている知識や技術を最大限に活用した交通プラットフォームの構築、ひいてはそれらをAppleのエコシステム内に組み込むことまで考えているのだろう。
Appleが将来性を見据えて進めている「Titan」プロジェクト、完成がとても楽しみだ。