10月27日に、Appleは新型ラップトップ型Mac「MacBook Pro (Late 2016)」を公開。「MacBook Pro」は度々アップデートが行われ、スペックの向上などが図られてきたものの、デザインが大きく変更されるのは約4年ぶりのこと。
「MacBook Pro (Late 2016)」の特徴は、従来モデルに比べて大幅な減量に成功したという点。そして、「Touch Bar」と呼ばれる新しいユーザーインターフェイスが搭載されたという点だ。
その他にも、ユーザーから不満の多い端子類の大幅な変更などもあり、その姿は大きく変化。これらの変更点のおかげで、ユーザーは必然的に「MacBook Pro」の使い方を変えなくてはいけなくなった。
これは、このレビューの結論にもなるのだが、新型「MacBook Pro」はどちらかと言うと「使う人を選ぶ端末」だ。あるユーザーによっては便利だと感じるだろうし、またあるユーザーにとっては不便だと感じることもあるだろう。
どうしてそれが言えるのか。これからレビューと共にじっくり解説していこう。
注文受付が開始されてから約23日後の今日、やっと届いた新型を手にした途端、すぐにでも開封したくて堪らなくなってしまったので、まずはアンボックスの様子をお伝えしよう!
大型化したトラックパッド、キーボードの改良で操作感がUP
今回僕が入手した端末は、「MacBook Pro (Late 2016)」のTouch Bar搭載13インチモデル、カラーは新色のスペースグレイ。
こちらが到着した「MacBook Pro」13インチモデルのパッケージ。13インチモデルといえども、予想よりも大きく、そして意外と重い。
相変わらず開封するのに手間がかかる包装フィルムを剥がして蓋を開けると、端末が保護フィルムに包まれたまま僕を待ち構えるように鎮座。
「スペースグレイ」の端末が、いつものMacと違ってクールで、とてもハンサム。中には「61W USB-C電源アダプタ」と、長さ2mの「USB-C充電ケーブル」が同梱。充電は基本的にこのケーブルで行うことにしよう。
こちらが取り出して、蓋を開けた状態。
まず一番先に目に入るのが、面積が大きくなった「トラックパッド」。「MacBook」シリーズを使う上で、おそらく一位二位を争うレベルで使用する頻度の高いパーツだと思うのだが、従来モデルよりも面積が広くなった(約2倍)ことで、快適なMacライフを実現。より自由にトラックパッドを使用できるようになった。
ブラウジングをするにしても、ブログを書くにしても常にスイスイで、操作性は大きく向上したような気がする。
ただ、あまりにキーボードとトラックパッドが近いからか、たまにだがキーボードタイプ中にトラックパットに手が触れてしまい、入力ミスが起きたり誤操作をすることがあった。ここはもう少し使い込んで、体が慣れてくるのを待つ必要があるのかもしれない。
そして次に触れるべきは、大きく変更が施されたキーボード周りだろう。まずは、キーボードの構造が「バタフライ構造」に置き換えられていて、より正確なキーボード入力が可能になったという点だ。
従来のモデルで採用されていた「シザー構造」では、キーの端がぐらつきやすいがために、キーの中心部以外を叩くと誤入力することがあった。
最初、僕は「MacBook Pro」が「バタフライ構造」を採用すると聞いて少しガッカリだった。なぜなら、12インチ「MacBook」のキータッチがあまり得意ではなかったから。どうにも、「MacBook」のキーストロークの浅さには慣れなかった。
12インチ「MacBook」で採用されていたキーボードは同じ「バタフライ構造」のものだが、「MacBook Pro (Late 2016)」のものは第2世代。少しだけ進化している。
Apple曰く、キーの安定さは12インチ「MacBook」に比べて4倍向上。多少の慣れは必要だが、従来と同じ感じでタイプすることができている。
実際にキーを叩いてみていただければ分かると思うのだが、12インチ「MacBook」に比べて、少しだけキーの位置が高くなっており、実際に押した時に”手応え”も感じる。
「カチッ」という心地いい音とともに文字入力を出来るのが、個人的には堪らなく嬉しかった。些細な問題に感じる人もいるかもしれないが、文字を打つ機会の多い僕にとって、ここはとても重要なファクターだったのだ。ただし、このタイプ音も音が大きすぎて気になる人もいると思う。僕は全然気にならないタチだが、気にする人は是非一度店頭でチェックしてみて欲しい。
何を隠そう、このレビュー記事は「MacBook Pro (Late 2016)」で入力しながら書いているのだが、いつもの端末と変わった感触で文字を入力するのは結構楽しい!
ユーザーの作業状況によって変幻自在に顔を変える「Touch Bar」
おそらく、皆さんが注目しているであろう有機ELタッチスクリーンの「Touch Bar」。こちらは第2のスクリーンとして活用されるだけでなく、キーボードの延長線のような存在でもある。
現に、ファンクションキーや「Esc」などの最上部のキーが全てタッチスクリーンに置き換えられており、ユーザーは「Touch Bar」をタッチすることでMacの操作が可能になった。
「Touch Bar」が使用できる局面は非常に多く、今までファンクションキーでできていたディスプレイの明るさ調整や、音量調整などはもちろん、動画のシークバーを操作したり、絵文字を選ぶなど多岐にわたる。今までキーボードやマウス、トラックパッドで行なっていた作業を、指ひとつで操作できるようになったのだ。
個人的に便利だと感じたのは、Safariなどのブラウジング時に「検索バー」が表示されること。この検索バーを押すことで、自動的にポインタが検索バーに移り、検索スタンバイ状態になる。調べながら絶え間なく文字入力する時などに効果を発揮しそうだ。
ちなみに、「Touch Bar」は全部で3つのエリアに分かれており、実はそれぞれ役割が異なる。
まず一つ目は「Esc」キーや「Cancel」キーなどを表示させる「システムボタン」エリア、そして二つ目はユーザーの操作しているものによって表示が置き換わるエリア、そしてこれらの右端に3つ目のエリアとして「Control Strip」と呼ばれる領域が存在する。
この「Control Strip」エリアに関してだが、Siriや明るさ調節ボタンなどが表示される領域となっているのだが、こちらはユーザーの好みで自由にカスタマイズが可能。普段よく使うショートカットキーを登録しておけば、作業がスイスイ進むはず。
すでに多くのアプリやサービスが、この「Touch Bar」に対応しているので、使い方次第ではユーザーの作業をより簡単にすることもできるだろう。
ただ、「Touch Bar」の表示は常に変化する。そうなると、ユーザーはどこに何があるのかを探す必要があるので、結果的にはトラックパッドを使って操作した方が早いということも結構ある。
「Touch Bar」があれば、劇的に変わるかというと”そうでもない”と答えざるを得ないだろう。ここばかりはユーザーの慣れや、今後のアップデート次第のところもある。
Macに初めて搭載された「Touch ID」
「Touch Bar」の右端には、iOS端末で搭載されている指紋認証センサー「Touch ID」が搭載。Mac端末としては初めてのことだ。
この「Touch ID」については、iPhoneなどで使っている人も多いため、わざわざ解説する必要はないとは思うが、これを使用することで、Macでもログインやスリープ解除、そして「Apple Pay」などで使用することが可能だ。
また、ユーザーの切り替えや、システム環境設定の一部の設定をロックするために「Touch ID」が使用できるなど、今までは手入力で行なっていた認証を一本の指で完結させることができるように。
Macの「Touch ID」で登録できる指は、1つのユーザーアカウントにつき合計3つまで。2つ以上のアカウントで利用する場合は、合計5つまで登録ができる。
「Touch ID」の読み込みは割と良好。指をかざせば「サッ」と読み取る感じ。精度は「iPhone 6s」以降の端末(iPhone SEは非対応)に搭載された第2世代「Touch ID」に匹敵するレベルだと思う。
軽量化と薄型化で、細マッチョ型ラップトップに変身
新型「MacBook Pro」は、従来モデルから重量とサイズ、どちらも小さくなった。以前のモデルも割とスリムな方だったとは思うが、ボクシングの試合前に減量をするボクサーのように、ストイックな減量が施されている。
例えば、僕が購入した「MacBook Pro (Late 2013)」Touch Bar搭載13インチモデルの重量は1.37kgで、旧型モデルと比べると210gも軽量化に成功している。また、サイズも幅30.41×奥行き21.24×高さ1.49cmと小型化(旧モデルは31.4×21.9×1.8cm)も実現。
もちろん15インチモデルも同様で、どちらも同じくらい軽量化、薄型化を実行した端末に仕上がっている。
僕の購入したモデルに関しては端末重量が1.5kgを切る快挙。おかげで、片手で持ってもカバンに入れて持ち歩いても、さほど重く感じることはない。
比較で分かりやすいのは、おそらく「MacBook Air」だろう。「MacBook Air」の13インチモデルは1.35kgなので、「MacBook Pro」の13インチモデルとの差はたったの20g。ほぼ同じ重さだと言える。持ち運びを想定するならば、やはり軽くて小さい端末であった方が便利だ。
性能は着実に向上 省電力化も達成
今回の新型「MacBook Pro」は、デザインが大きく変化したこともあり、ついついそこに意識が行きがちだが、Appleは性能の面でも着実なアップデートを見せてきた。
残念ながら、最新の第7世代CPUである「Kaby Lake」が搭載されているわけではなく、あくまで搭載されているのは第6世代の「Skylake」。ただ、最新のCPUではないからと言って性能を侮ることなかれ。
今回は、僕の方でもGeekbenchによるベンチマークを取ってみた。モデルは13インチモデルだが、CPUは「3.1GHzデュアルコアIntel Core i5プロセッサ(Turbo Boost使用時最大3.5GHz)」、RAMは16GB、512GB SSDストレージ、そしてグラフィックチップはIntel Iris Graphics 550を搭載しているものになる。
このモデルのGeekbenchによるCPUベンチマーク結果は以下の通り。
Single Core | Multi-Core | |
---|---|---|
ベンチマークスコア | 3812 | 7614 |
以前から明らかになっていることではあるが、やはり僕の端末でも旧型モデルとそこまで性能差がないことが判明。では一体、何が変わったのだろうか。
それは新たに「Skylake」を搭載してことによって、省電力化に成功しているという点。やはり、「Touch Bar」など新たなスクリーンを搭載したことで、どうしても消費電力は大きくなりがちだ。
それらをCPUの省電力化で補い、従来モデルと同様の連続駆動時間を実現しているという。ちなみに、この他にもSSDの読み込み速度と書き込み速度が最大で2倍になっているなども伝えられている。
まだそれらを実感する機会はないが、いずれは大容量のデータを扱う時に重宝することになるだろう。
僕がテストしたベンチマークはあくまで一部だが、他のメディアなどでも取り上げていたりするので、これ以上の詳しいベンチマークに関してはそちらをみて欲しい。
「USB-C」への”強引”な移行の是非
「MacBook Pro (Late 2016)」は、イヤフォンジャックの全端子が「USB-C」端子に置き換えられた。これは、12インチ「MacBook」でも実施されていたことで、Appleは従来の「USB-A」や「SDカードスロット」などを躊躇いもなく廃止。
おかげで「MacBook Pro (Late 2016)」からは、従来のデバイスを直接繋ぐことがほぼできなくなった。もし有線接続しようとするならば、「USB-C」接続できるように、間にアダプタを噛ませてやる必要がある。人によってはアダプタだらけになる最悪のケースも。
ただ、これらの端子を「USB-C」ポートに統一したおかげで、端末のデザインや接続方法など、ある意味シンプルにはなった。単純に「USB-C」端子に対応させればいいわけだから。
しかも「USB-C」に置き換えたことで、良いこともたくさん起こった。まずは「USB-PD」と呼ばれる急速充電に対応していること、そしてデータ転送速度が早く、ユーザーに無駄な時間を使わせないこと。
そして、何より「Thunderbort 3」にも対応しているため、1本のケーブルで5K解像度の高画質な画面出力に対応しているということ。
Appleは公式サイトで5Kに対応したLG製ディスプレイを販売している。より綺麗な解像度でMacを使用できるようになることを期待しているユーザーも多かったのではないだろうか。
これらを実現させたのも、全て「USB-C/Thunderbolt 3」ポートが搭載されたから。何も全ての端子を廃止する必要はなかったのかもしれないが、やはりこれはAppleが何年も先を見据えたアクション。
おそらく将来的には「USB-C」タイプのポートで溢れる時代が到来し、ほとんどのデバイスは「USB-C」ケーブルで接続する時代が来る。それらを積極的に取り入れた製品という意味では、決して悪い選択ではないと個人的には思っている。
この”強引”な変更が、吉と出るか凶と出るか。もちろん僕は前者だと信じているが、あなたはどう感じるだろうか。
ちなみに、Appleは今回の「MacBook Pro」発売に伴って、各種アダプタ、ケーブルを大幅値下げして販売している。もし同端末を購入したなら、これらのケーブルが必要になるケースもあるだろう。値下げ販売は12月31日までなので、要チェック。
まとめ:コンパクト&高性能さで選ぶなら13インチモデル、ハイスペックを追求するなら15インチモデル
以上が今回、「MacBook Pro (Late 2016)」を使用してみた感想となる。他にも、背面にあるAppleのロゴマークが光らなくなっていたり、「ジャーン」という起動音が鳴らなくなっていたりと、今回触れなかった地味な変更点も多い。
また、ディスプレイが「DCI-P3」という、より色域の広いディスプレイに変わっていて、今までよりも綺麗な色表現が可能になった。このように「MacBook Pro (Late 2016)」は、隅から隅までアップデートされている印象で、買った僕からすればとても満足のできる端末に仕上がっていた。
個人的に「MacBook」シリーズには高性能さとコンパクトさを求めているので、上位モデルの15インチモデルを購入する予定は最初からなかった。
もちろん13インチモデルは、(15インチモデルに比べたら)性能は落ちてしまうことになるが、僕の場合は家に「iMac 4K Retinaディスプレイモデル」があるので、メインの作業はiMacがこなす。
どちらかというと「持ち運びのしやすさ」に期待しているので、必要以上に大きな端末を買うメリットはあまりない。
もし13インチモデルと15インチモデルのどちらかを買おうか迷った場合、持ち運びを重視するなら、僕は13インチモデルを推す。もし15インチモデルを買うとすれば、それは13インチモデルのスペックに満足できない人だろう。
もし、iMacなど他にメイン端末がないのであれば、それはおそらく15インチモデルの一択だ。端末重量が少しだけ重くはなるものの、高いCPU性能とグラフィック性能を持っているので、3Dモデリングなど、より負荷の高い作業をこなすためにはそれくらいの性能が必要になるかもしれない。
13インチモデルの価格は178,800円〜、そして15インチモデルは238,800円〜(いずれも税別/Touch Bar搭載モデル)。繰り返すが、ある程度の高性能さとサイズ感を重視するなら13インチモデル、高性能を追求したい人は15インチモデルを購入しよう。
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