パラマウント、ワーナーに「敵対的買収」提示。Netflix合意に揺さぶり

Skydance傘下のParamount(パラマウント)が、Warner Bros. Discovery(ワーナー・ブラザース・ディスカバリー、WBD)の全株式を対象にした全額現金での公開買付けを発表した。WBDがつい先日、主要スタジオ事業とストリーミングネットワークをNetflixへ売却することで合意した直後の動きで、Netflixの計画を覆す狙いだ。

ParamountはWBD株主に1株あたり30ドルの現金を提示。負債込みで企業価値を1,084億ドルと評価する内容で、2025年9月10日の株価を基準にすると約139%のプレミアムにあたる。WBDの取締役会がすでにNetflix案を支持している中で、株主へ直接呼びかける「敵対的買収」として仕掛けた格好だ。

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Paramountが「Netflix案より優れている」と主張する理由

Paramountは今回の提案について、「WBD株主にとってより確実で価値の高い選択肢」と強調している。主張のポイントは次のとおり。

  • シンプルで確実な「全額現金」
  • 「残骸」の扱いへの疑念
  • 規制承認のリスク

まず、「全額現金」の優位性として、ParamountはNetflix案の構造を問題視している。Netflix案は23.25ドルの現金に、業績次第で価値が変わる4.50ドル分のNetflix株式を組み合わせたもので、合計評価額は27.75ドルにとどまる。Paramountは、この複雑で変動リスクのある構成がWBD株主にとって不利だと主張する。

次に、「残骸」とされるGlobal Networks事業の扱いだ。Netflixの買収案では、WBD株主がCNNなどを含む同事業を、高い負債を抱えた小規模企業として持ち続ける形になる。デヴィッド・エリソンCEOは、WBD取締役会がこの事業の将来価値を過大評価していると批判し、株主にとって重荷になると指摘した。

さらに、Paramountは規制面のリスクも強調する。NetflixがWBDを取得すれば、世界のSVOD市場での加入者シェアは43%に達するとされ、独占懸念から各国で厳しい審査を受ける可能性が高い。一方、自社との統合は競争を促進するとして、より迅速な規制承認が期待できると述べている。

エリソンCEOは「WBD株主だけでなく、クリエイティブコミュニティや映画館、視聴者にとっても最善の提案だ」と述べた。買収が実現した場合は、Paramount+とHBO Maxが統合され、Netflix、Amazon、Disneyと競う強力なDTCサービスが生まれる見通しだ。

WBD取締役会はParamountからの提案を受領したことを認めつつ、Netflix案の推奨は「現時点では変更しない」とコメント。10営業日以内に株主へ正式な見解を示すという。Netflix側も「Paramountの動きは想定内」として、自社の合意に自信を見せている。

市場は敏感に反応し、WBD株は4%以上、Paramount株は9%上昇。逆にNetflix株は3%以上下落した。

Paramountの公開買付けは2026年1月8日(ニューヨーク時間午後5時)が期限。Bank of AmericaやCiti、Apolloによる計540億ドルの融資コミットメントに加え、Ellison FamilyとRedBird Capitalの出資が入り、資金面での条件は伴わない。

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(画像:Romain Malaunay, Unsplash)

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