
コラボレーションデザインツール「Figma」が、ついに上場への道を正式に歩み始めた。米国証券取引委員会(SEC)に提出していた非公開のS-1登録届出書が公開され、Figmaがニューヨーク証券取引所(NYSE)でティッカーシンボル「FIG」での株式公開を目指すことが明らかになった。
このIPOは、デザインソフトウェア業界における今年最大級の話題株になるのは間違いない。2022年にはAdobeによる200億ドルでの買収提案が持ち上がったものの、欧州と英国の規制当局による反トラスト調査の末、2023年末に両社は買収計画を白紙撤回。それからわずか半年強でFigmaは単独での株式公開を選択した。
売上は2024年に7億4900万ドル、AI投資でさらなる成長狙う
Figmaの公開資料によれば、2024年の年間売上は約7億4900万ドル。前年比で48%もの成長を遂げた。2025年1~3月期も好調で、売上は前年同期比で約46%増の2億2820万ドルに達し、純利益も約3倍の4490万ドルと大幅に拡大した。
これまで非公開企業だったFigmaにとって、今回のS-1開示は初めての財務情報公開となる。非GAAPベースの利益率も約17%と黒字を確保。米国以外での採用も順調に進んでおり、現在ではFortune 500企業の95%がFigmaを導入、月間アクティブユーザーは約1300万人に達する。
特筆すべきは、そのユーザーの約3分の2が「デザイナー以外」という点だ。プロダクトマネージャー、エンジニア、マーケターなど、幅広い職種にリーチを広げている。
さらに注目すべきは、AI領域への積極投資だ。FigmaはすでにAIによるコード生成やデザインサーバーへのAIアクセス機能を導入しており、CEOのディラン・フィールドは今回の株式公開申請書の中で「AIへの支出は今後数年間、短期的な効率性に悪影響を及ぼすかもしれないが、それでも我々は投資を倍増させる」と強調している。
ちなみに、今年追加された新機能には、AIコーディング支援ツール、ウェブサイトビルダー、ブランドマーケティング機能、デジタルイラスト向けツールなどが含まれる。単なるUIデザインツールから、プロダクト開発全体をカバーするAI時代のプラットフォームへの進化が進められている。
IPO後も「大胆な投資と大型M&A」を示唆
IPOによる調達資金の使途としては、既存のリボルビングクレジットファシリティ(短期融資枠)の返済に一部充てる予定。特に今後発生する税金支払いに備えてこの融資枠を引き出す計画もあるという。
ディラン・フィールドは株式公開にあたっての株主向け書簡の中で、AI分野への投資だけでなく、将来的なM&A(企業買収)にも積極姿勢を示している。「私たちはチャンスがあれば、大規模なプラットフォーム投資やM&Aにおいて大胆な一手を取る」とし、「その決断は短期的には非合理に見えるかもしれないが、長期的成長を最優先する」と明言した。
今回のIPOの主幹事は、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、アレン&カンパニー、JPモルガンが務め、その他バンク・オブ・アメリカ証券、ウェルズ・ファーゴ証券、RBCキャピタル・マーケッツなどが幹事団に名を連ねる。具体的な公開日や価格帯については今後の市場状況次第となるが、いずれにせよテック業界、特にSaaSおよびデザインソフトウェア分野における2025年最大級のIPO案件となることはほぼ確実だ。
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