
Appleは、日本を代表する映画監督・是枝裕和氏による短編映画『ラストシーン』を同社公式YouTubeチャンネル・Apple TVアプリにて公開した。
『ラストシーン』は、iPhoneのカメラのみを使って写真・映像を撮影するという、Appleがグローバルで展開しているキャンペーン 「Shot on iPhone」 の一環として制作されたもの。
もちろん、本作の全編がiPhone 16 Proによって撮影されているわけだが、映画用の本格的な機材で撮影したかのような出来栄えになっている。
公開に先立ち、プレス向けの試写会が開催され、報道陣に向けて本編とメイキング映像が公開された。試写会のあとには、本作の監督を務めた是枝裕和さん、そしてストーリーの主要人物を演じる仲野太賀さん、福地桃子さん、黒田大輔さん、リリー・フランキーさんなど豪華出演陣が登壇し、本作の撮影にまつわるエピソードを明かした。本稿はそのレポート記事となる。
iPhone 16 Proで全編撮影、映画用機材にも匹敵する映像クオリティ

『ラストシーン』は、是枝監督初のタイムトラベル・ラブストーリーで、舞台は神奈川県鎌倉市。50年後の未来から来た女性と、現代に生きるテレビドラマ脚本家の交流を通じて、「未来に何が残り、何が消えるのか」 というテーマを描く。
脚本家の倉田はテレビドラマ 「もう恋なんてしない」 の脚本の改訂に取り組む。
そこに、50年後からタイムトラベルしてきたという由比が現れ、倉田に 「ラストシーンを書き直して欲しい」 と頼む。
倉田は疑念を持つが、由比が主演女優の孫であること、そして自分のせいで未来の世界からテレビドラマが消えてしまったことを知る。
倉田は未来を変えるため、由比と共に脚本を書き直そうとする。
主演は、是枝作品初出演となる仲野太賀さんと福地桃子さん。共演に黒田大輔さん、リリー・フランキーさんが名を連ね、撮影監督は是枝作品で長年タッグを組んできた写真家・瀧本幹也さんが務めた。
撮影現場に訪れた 「新時代」 の実感

iPhone 16 Proの多様な撮影機能が、本映画のクオリティを支えている。4K 120fpsのドルビービジョン撮影をベースに、被写界深度が擬似的に調整できるシネマティックモードや最大5倍の光学ズーム撮影、激しい動きのなかでも手ブレの少ない映像が撮影できるアクションモードなどを駆使しながら、撮影を進めていった。

冒頭のファミレスで主人公がヒロインと邂逅するシーンで、手前の主人公から奥のヒロインに向けてフォーカスがシフトすることで厚みのある映像を撮影することができたと話す、是枝監督。また、「日常にあるつかの間の瞬間を、自然体で描くことに注力した。iPhoneのカメラ機能のおかげで、普通のものが特別になった」 とコメントした。
また、主演の仲野太賀さんを含む出演陣からは、「(映画の撮影機材ではなく) iPhoneで撮影したことで、撮影機材の存在感をあまり感じることなく撮影に臨むことができた。」 とのコメントがあった。


さらに、物語の途中では観覧車に乗るシーンがあるのだが、通常であれば撮影機材の関係で数人しか乗ることができないところ、iPhoneという軽いデバイスのおかげで出演陣・撮影陣で合計5人も乗ることができたという。撮影環境が大きく変わったことから 「新時代が来たな……」 と感じたと話していた。
また、リリー・フランキーさんはiPhoneのカメラとしての実力を評価したうえで、「映画監督になりたいと思ったら、映画監督になるよりも前にお金を貯める必要があった。でも、(iPhoneで) ズームしてもこんなに綺麗に撮れるんだったら、0歳でも100歳でも映画監督になれるんだなと思う。俺も何か撮りたいなと思った。」 と話した。
最後に、福地桃子さんは 「(本作のテーマを踏まえて) 選択していったものが、未来に、自分や周りの人に心の中で光って残っていくものであってほしいなと願っています。」 とコメントした。

iPhone 16 Proという誰もが手にできるツールを通して描かれた『ラストシーン』は、映像表現の未来と、物語が持つ普遍的な力を静かに、そして力強く示してくれた。
是枝監督が語る「日常の中のつかの間の瞬間」を、観る者がどう受け取り、何を心に残すのか――。それはまさに、本作が問いかける「未来に何が残り、何が消えるのか」というテーマそのものだろう。iPhoneのカメラが捉えたその “ラストシーン” は、菊池さんが話すとおり、きっと観客一人ひとりの記憶のどこかに残ってくれるはずだ。
ちなみに、本作の主題歌にはVaundyによる書き下ろし楽曲 「まじで、サヨナラべぃべぃ」 を起用した。楽曲は、Apple Musicにて空間オーディオで独占配信されている。
また、Apple Musicのラジオ番組 「Tokyo Highway Radio」 では、是枝監督とVaundyが作品について語る特別回も公開されている。
そして、短編映画『ラストシーン』は、Apple Japan公式YouTubeチャンネルやApple TVアプリにて視聴可能だ。
(画像提供:Apple)