「M4チップ」 ベンチマークスコアまとめ。M1/M2/M3チップとも比較してみた

Appleは2024年5月、次世代SoC 「M4」 を発表した。また、今年10月にはその上位版となるSoC 「M4 Pro」 「M4 Max」 を発表している。

筆者は11インチの 「iPad Pro (M4)」 を購入しており、ベンチマークソフト 「Geekbench 6」 でM4チップのベンチマークスコアを計測。また、11月に発売したばかりの 「M4 Pro」 「M4 Max」 を搭載するMacBook Proのベンチマークスコアも判明している。

そこで本稿では、「M4」 「M4 Pro」 「M4 Max」 のベンチマークスコアをまとめ、過去に発売したMacBookシリーズやiPad Pro/Airとスコアを比較してみた。M4世代のチップがどれほどの性能を持っているのか、気になっている方はチェックいただきたい。

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M4チップとは?

Appleの 「M4」 は、第2世代の3nmテクノロジーを使って設計され、280億個のトランジスタで構成された最新SoC。

2つのOLED発光層を積層して作られた、iPad Proの最先端ディスプレイ 「Ultra Retina XDRディスプレイ」 の精度や色精度、輝度の均一性を可能にするため、新しいディスプレイエンジンを搭載しているのが大きな特長だ。

CPUは、iPad Proの256GB/512GBモデルは3つの高性能コアと6つの高効率コアを搭載した9コア構成、1TB/2TBモデルは4つの高性能コアと6つの高効率コアを搭載した10コア構成。MacBook Proには10コア構成のものが搭載されている。

改善された分岐予測機能を備え、高性能コアにはより幅広いデコードエンジンと実行エンジンを搭載し、高効率コアにはより深い実行エンジンを搭載したという。CPUパフォーマンスは前世代のiPad Pro (M2) よりも最大1.5倍高速化している。

GPUはiPad ProもMacBook Proも10コア構成で、M3ファミリーの次世代グラフィックスアーキテクチャをもとに設計された。

ハードウェアのローカルメモリをリアルタイムで動的に割り当て、GPUの平均使用率を劇的に高める 「Dynamic Caching」 を備えたことで、負荷の高いプロ向けアプリやゲームのパフォーマンスが大幅に向上。その結果、ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシングがiPadで初めて利用可能になり、ゲームなどでさらにリアルな陰影と反射を表現できるようになった。

さらに 「ハードウェアアクセラレーテッドメッシュシェーディング」 も組み込まれており、ジオメトリ処理の能力と効率を高め、ゲームやグラフィックスを駆使するアプリでさらに視覚的に複雑なシーンを可能にしているという。Octaneなどのアプリでのプロ向けのレンダリングパフォーマンスは大幅に向上し、M2よりも最大4倍高速になった。

M4 Proチップとは

M4 Proチップは、M4チップよりも多いCPU・GPUコアを搭載し、さらなる性能アップを図ったプロ向けデバイスに搭載されるSoC。コア構成は、12コアCPU/16コアGPUと、14コアCPU/20コアGPUの2種類から選択可能だ。

CPUパフォーマンスは、M1チップを搭載したMacに比べて最大1.8倍、M1 Proを搭載したMacに比べて最大1.9倍高速に動作する。GPUパフォーマンスは、最大20コアを搭載したM4 Proチップの場合はM4チップに比べて最大2倍の性能差がある。

ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシングを備え、主にAI機能で利用されるNeural Engineも16コア構成だ。

そのほか、M4 Proは最大64GBの高速ユニファイドメモリと273GB/sのメモリ帯域幅、Thunderbolt 5もサポートする。

M4 Maxチップとは

M4 Maxチップは、M4およびM4 Proチップを上回る、ハイエンドな性能をもつSoC。

コア構成は、14コアCPU/32コアGPU、および16コアCPU・40コアGPUの2種類を用意する。CPUパフォーマンスは、M1 Maxから最大2.2倍高速。GPUパフォーマンスは、M1 Maxより最大1.9倍高速だ。

M4 Maxは、最大128GBの高速ユニファイドメモリと最大546GB/sのメモリ帯域幅に対応する。メディアエンジンは、2つのビデオエンコードエンジンと2つのProResアクセラレータを備えるなどビデオプロフェッショナルのために設計されたSoCとなっている。

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M4チップのベンチマークスコアまとめ

今回実機が用意できたのは以下モデル。

  • 11インチiPad Air (M2):128GBモデル/モデル名:iPad14,8
  • 11インチiPad Pro (M4):256GBモデル/モデル名:iPad16,3
  • 11インチiPad Pro (M4):1TBモデル/モデル名:iPad16,3
  • MacBook Pro (14-inch, M4 Pro, 2024):モデル名:Mac16,8

CPU性能

まずは 「Geekbench 6」 でCPUのシングルコア/マルチコアスコアを計測した。比較対象として、M2/M1を搭載したiPad Proや、Mシリーズのチップを搭載した過去のMacのスコアも掲載しておく。

また、10月27日の週にはM4/M4 Pro/M4 Maxを搭載した新型iMac/Mac mini/MacBook Proが発表されているが、まだ実機が各ユーザーの手元に届いていないためスコアの確認がほぼできていない状態だ。先行で実機を入手しているユーザーからスコアが共有されているものに関しては表内に記入している。

CPUベンチマーク比較

製品名SoCコア構成シングルコアマルチコア
MacBook Pro
(16-inch, M4 Max)
M4 Max合計16コア
・高性能x12
・高効率x4
400626068
MacBook Pro
(16-inch, M4 Max)
M4 Max合計14コア
・高性能x10
・高効率x4
397123844
MacBook Pro
(16-inch, M4 Pro)
M4 Pro合計14コア
・高性能x10
・高効率x4
392922059
MacBook Pro
(14-inch, M4 Max)
M4 Max合計16コア
・高性能x12
・高効率x4
393125281
MacBook Pro
(14-inch, M4 Max)
M4 Max合計14コア
・高性能x10
・高効率x4
396222465
MacBook Pro
(14-inch, M4 Pro)
M4 Pro合計14コア
・高性能x10
・高効率x4
391522007
MacBook Pro
(14-inch, M4 Pro)
M4 Pro合計12コア
・高性能x8
・高効率x4
390020365
MacBook Pro
(14-inch, M4)
M4合計10コア
・高性能x4
・高効率x6
372014321
Pad Pro
(11-inch, M4, 1TB)
M4合計10コア
・高性能x4
・高効率x6
370714418
iPad Pro
(11-inch, M4, 256GB)
M4合計9コア
・高性能x3
・高効率x6
363412978
MacBook Pro
(16-inch, M3 Max)
M3 Max合計16コア
・高性能x12
・高効率x4
321821398
MacBook Pro
(16-inch, M3 Max)
M3 Max合計14コア
・高性能x10
・高効率x4
307919057
MacBook Pro
(16-inch, M3 Pro)
M3 Pro合計12コア
・高性能x6
・高効率x6
312115686
MacBook Pro
(14-inch, M3 Max)
M3 Max合計16コア
・高性能x12
・高効率x4
310121067
MacBook Pro
(14-inch, M3 Max)
M3 Max合計14コア
・高性能x10
・高効率x4
302115686
MacBook Pro
(14-inch, M3 Pro)
M3 Pro合計12コア
・高性能x6
・高効率x6
316715524
MacBook Pro
(14-inch, M3 Pro)
M3 Pro合計11コア
・高性能x5
・高効率x6
313814369
MacBook Pro
(14-inch, M3)
M3合計8コア
・高性能x4
・高効率x4
312712148
MacBook Air
(13-inch, M3)
M3合計8コア
・高性能x4
・高効率x4
306611927
Mac Studio
(M2 Ultra)
M2 Ultra合計24コア
・高性能x16
・高効率x8
268820970
MacBook Pro
(14-inch, M2 Max)
M2 Max合計12コア
・高性能x8
・高効率x4
269214918
MacBook Pro
(14-inch, M2 Pro)
M2 Pro合計12コア
・高性能x8
・高効率x4
258614235
MacBook Pro
(14-inch, M2 Pro)
M2 Pro合計10コア
・高性能x6
・高効率x4
266111849
MacBook Air
(13-inch, M2)
M2合計8コア
・高性能x4
・高効率x4
25719876
iPad Pro
(11-inch, M2)
M2合計8コア
・高性能×4
・高効率×4
262110091
iPad Air
(11-inch, M2)
M2合計8コア
・高性能×4
・高効率×4
26119985
Mac Studio
(M1 Ultra)
M1 Ultra合計20コア
・高性能x16
・高効率x4
243018566
Mac Studio
(M1 Max)
M1 Max合計10コア
・高性能x8
・高効率x2
245612959
MacBook Pro
(16-inch, M1 Pro)
M1 Pro合計10コア
・高性能x8
・高効率x2
239912334
MacBook Pro
(14-inch, M1 Pro)
M1 Pro合計8コア
・高性能x6
・高効率x2
239810585
MacBook Air
(13-inch, M1)
M1合計8コア
・高性能x4
・高効率x4
23838724
iPad Pro
(11-inch, M1)
M1合計8コア
・高性能×4
・高効率×4
23648686
iPad Air
(11-inch, M1)
M1合計8コア
・高性能×4
・高効率×4
23178460

上記結果から、M4はM2に比べてシングルコアスコアが最大41%、マルチコアスコアが最大43%向上していることがわかる。M1と比べると、シングルコアスコアは最大57%、マルチコアスコアは最大66%向上している。

参考としてM3と性能を比べてみると、シングルコアスコアは最大21%、マルチコアスコアは最大21%向上している。

ちなみに、M4 (高性能×4、高効率×6) とM3 Pro (高性能×6、高効率×6) で比較してみると、コア数はM3 Proの方が多いものの、シングルコアスコアはM4の方が高く、マルチコアスコアもM3 Proの方がわずかに高いだけだとなったことから、M4はM3 Proと性能が同等、あるいはそれよりも高いということができるかもしれない。M3 Maxと比較すると、さすがにM3 Maxの方がマルチコアスコアが約25〜31%高い。

以上の結果をまとめると、M4のCPU性能はM3 Proとほぼ同じくらいであることがわかった。

M4 Pro/M4 MaxはM4に比べて高性能コアが圧倒的に多いことから、マルチコアスコアが高くなっている。例えばM4の10コアモデルとM4 Proの12コアモデルでは、M4 Proの方が42%も性能が高い。

ちなみに、以下はiPadのみを比較した表だ。世代間のスコアを比較したい場合は以下の表を参考にしていただきたい。

CPUベンチマーク比較 (iPadのみ)

製品名SoCコア構成シングルコアマルチコア
iPad Pro
(11-inch, M4, 1TB)
M4合計10コア
・高性能x4
・高効率x6
370714418
iPad Pro
(11-inch, M4, 256GB)
M4合計9コア
・高性能x3
・高効率x6
363412978
iPad Pro
(11-inch, M2)
M2合計8コア
・高性能×4
・高効率×4
262110091
iPad Air
(11-inch, M2)
M2合計8コア
・高性能×4
・高効率×4
26119985
iPad Pro
(11-inch, M1)
M1合計8コア
・高性能×4
・高効率×4
23648686
iPad Air
(11-inch, M1)
M1合計8コア
・高性能×4
・高効率×4
23178460

GPU性能

次はGPU性能をチェックすべく、Geekbench 6のMetalスコアを計測した。こちらもCPU性能と同様、比較対象としてM2/M1を搭載したiPad Proや、Mシリーズのチップを搭載した過去のMacのスコアも掲載しておく。

GPUベンチマーク比較

製品名SoCコア数OpenCLMetal
MacBook Pro
(16-inch, M4 Max)
M4 Max40コア114184179032
MacBook Pro
(16-inch, M4 Max)
M4 Max32コア100039158241
MacBook Pro
(16-inch, M4 Pro)
M4 Pro20コア69538113028
MacBook Pro
(14-inch, M4 Max)
M4 Max40コア118295193017
MacBook Pro
(14-inch, M4 Max)
M4 Max32コア101318160403
MacBook Pro
(14-inch, M4 Pro)
M4 Pro20コア69073114294
MacBook Pro
(14-inch, M4 Pro)
M4 Pro16コア6101999190
MacBook Pro
(14-inch, M4)
M410コア3802157730
iPad Pro
(11-inch, M4)
M410コア53594
MacBook Pro
(16-inch, M3 Max)
M3 Max40コア91071154764
MacBook Pro
(16-inch, M3 Max)
M3 Max30コア76577125046
MacBook Pro
(16-inch, M3 Pro)
M3 Pro18コア5029977739
MacBook Pro
(14-inch, M3 Max)
M3 Max40コア92159152579
MacBook Pro
(14-inch, M3 Max)
M3 Max30コア76915124177
MacBook Pro
(14-inch, M3 Pro)
M3 Pro18コア5029977739
MacBook Pro
(14-inch, M3 Pro)
M3 Pro14コア4277368579
MacBook Pro
(14-inch, M3)
M310コア3033247392
Mac Studio
(M2 Ultra)
M2 Ultra76コア128858218367
Mac Studio
(M2 Ultra)
M2 Ultra60コア114679199183
MacBook Pro
(14-inch, M2 Max)
M2 Max38コア83221140362
MacBook Pro
(14-inch, M2 Max)
M2 Max30コア75786120781
MacBook Pro
(14-inch, M2 Pro)
M2 Pro19コア5183582754
MacBook Pro
(14-inch, M2 Pro)
M2 Pro16コア4572374656
MacBook Air
(13-inch, M2)
M210コア2866946140
MacBook Air
(13-inch, M2)
M28コア2411439381
iPad Pro
(11-inch, M2)
M210コア46545
iPad Air
(11-inch, M2)
M210コア41745
Mac Studio
(M1 Ultra)
M1 Ultra64コア104687170072
Mac Studio
(M1 Ultra)
M1 Ultra48コア89569153801
MacBook Pro
(14-inch, M1 Max)
M1 Max32コア69552117211
MacBook Pro
(14-inch, M1 Max)
M1 Max24コア5977999774
MacBook Pro
(14-inch, M1 Pro)
M1 Pro16コア4166864524
MacBook Pro
(14-inch, M1 Pro)
M1 Pro14コア3835262842
MacBook Air
(13-inch, M1)
M18コア2106833318
MacBook Air
(13-inch, M1)
M17コア1876030652
iPad Pro
(11-inch, M1)
M18コア32648
iPad Air
(11-inch, M1)
M18コア32621

上記結果から、M4はM2に比べてMetalスコアが約28%向上していることがわかった。M1と比べると、スコアは約64%向上している。

参考としてM3チップを搭載したMacBook Airと比べてみたところ、スコアが約14%向上していることが確認できた。

ちなみに、コア数が多いM3 Pro (14コア) とM4 (10コア) のスコアを比較してみたが、やはりM3 Proの方が約28%高いという結果になった。以上の結果からM4は、M3とM3 Proのちょうど中間くらいのGPU性能を持っていることがわかった。

M4 Pro/M4 Maxに関しては、同じM4世代のSoC同士で比べると1コアあたりの性能は基本的には同じになることから、コア数が多ければ多いほどグラフィック性能が高くなる。例えばM4 (10コア) とM4 Pro (20コア) では、OpenCLもMetalもスコアは約2倍になっている。3Dレンダリングやゲーミングなど高いグラフィック性能を必要とする作業をする人はコア数はしっかり吟味して購入していただきたい。

ちなみに、以下はiPadのみを比較した表だ。世代間のスコアを比較したい場合は以下の表を参考にしていただきたい。

GPUベンチマーク比較 (iPadのみ)

製品名SoCコア数Metal
iPad Pro
(11-inch, M4)
M410コア53594
iPad Pro
(11-inch, M2)
M210コア46545
iPad Air
(11-inch, M2)
M210コア41745
iPad Pro
(11-inch, M1)
M18コア32648
iPad Air
(11-inch, M1)
M18コア32621

NPUの演算性能 (AI性能)

機械学習アプリケーションのパフォーマンスをどれぐらい発揮できるかを測定する 「Geekbench AI」 のスコアも計測してみた。この数値が高ければ高いほどAI性能が高いことを示す。

製品名SoCコア数CPUGPUNPU
MacBook Pro
(M4 Pro, 2024)
M4 Pro16コアS:5756
H:8920
Q:6941
S:13853
H:15354
Q:13502
S:5789
H:37095
Q:50027
iPad Pro
(11-inch, M4)
M416コアS:4471
H:6399
Q:5418
S:8205
H:9083
Q:3018
S:3290
H:18916
Q:24722
MacBook Pro
(M3 Pro, 2023)
M3 Pro16コアS:4183
H:6914
Q:5606
S:10597
H:12276
Q:10810
S:4179
H:32288
Q:36825
Single Precision Score
(単精度スコア)
FP32 (32ビット浮動小数点) 演算の性能を示す。高い数値精度が求められる画像処理などのタスクで主に使用される。
Half Precision Score
(半精度スコア)
FP16 (16ビット浮動小数点) 演算の性能を示す。単精度よりも数値精度は低いものの、計算速度が速くメモリ使用量も少ないため、音声認識や顔認識などのリアルタイムアプリケーションなどで使用される。
Quantized Score
(量子化スコア)
INT8 (8ビット整数) 演算の性能を示す。数値精度を若干犠牲にする代わりに、計算速度と効率を大幅に向上させるため、エッジデバイスやモバイルデバイスでのAI推論に適している。

いずれのモデルもコア数は同じであるものの、CPU・GPUコア数が異なる関係でそれぞれのスコアに違いが生まれている。やはりもっとも高性能なのがM4 Proで、M3 Proに比べて総合的に数値が向上している。2025年以降に日本語にも対応予定のAppleのAI機能 「Apple Intelligence」 でも高いパフォーマンスを発揮してくれそうだ。

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(画像:Apple)

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