Sonos Ace レビュー|スマホでもホームシアターでも使えるSonos初のヘッドホン。1ヶ月使って感じた良いところ悪いところ

Sonosにとって初挑戦となるヘッドホン製品 「Sonos Ace」 が本日発売する。

「Sonos Ace」 は、映画やドラマ、音楽などあらゆるオーディオ体験をリッチな品質で体験できるように、最新のテクノロジーを搭載したプレミアムヘッドホン。さらに、Sonosの 「音」 に関するフィロソフィーをそのままヘッドホンに詰め込んだ、ある種 Sonosが考える 「理想のワイヤレスヘッドホン」 を提示した製品とも言える。

本製品についてはグローバル発表前からすこし触らせてもらっていたが、実際に自分の生活に取り入れて使い心地をチェックしてみたいと思い、このたびSonosから実機をお借りして約1ヶ月ほど使ってみることができた。

本稿は実機レビュー編ということで、使っていくうちに感じた 「Sonos Ace」 の魅力をお伝えしていきたいと思う。

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Sonos Aceのデザインをチェック

Sonosらしいシンプルな製品デザイン。個人的にお気に入り

まずは 「Sonos Ace」 のデザインと装着感をチェックしていこう。

「Sonos Ace」 は、頭に装着したときに両耳をすっぽりと覆うことができる、オーバーイヤー型のワイヤレスヘッドホンだ。

大きなイヤーカップに、フッカフカなイヤークッションとヘッドバンド。形状こそ他社製のヘッドホンと大きく違わないものの、左右のイヤーカップに若干の見た目の違いが設けられていて、装着する方向が分かりやすいという特徴がある。

イヤークッションはマグネット式で装着しており摩耗してきたら取り外して交換できる

例えば、右イヤーカップの外側だけにSonosのロゴが刻印されていたり、イヤーカップ内側の色が左右で異なっていたり。

また、電源のON/OFFやデバイスとの接続などの操作系はすべて左側のイヤーカップに集約されており、逆側の右イヤーカップには音声再生に関係するものが集約。シンプルなデザインと、直感的な操作感と使いやすさを生み出している。

ふんわりと柔らかいイヤークッション

ヘッドバンドはもちもちとした感触

「Sonos Ace」 の装着感に関して、Sonosは “何も装着していないような開放感” を目指したとしている。ヘッドホン自体の重量をなるべく軽くし、耳が接するイヤークッションやヘッドバンドの部分にできるだけ柔らかい素材を使用。これらの工夫のおかげで、ヘッドホンの存在を意識せず自然に聴くことができる。

イヤーカップとヘッドバンドを繋ぐフレーム部はステンレス風で、程よい高級感を醸し出す。すこし力を入れて引っ張り出すことで、自身の頭のサイズに合うように無段階で調整できる。

左側のイヤーカップには、電源ボタンとUSB Type-Cコネクタ。右側のイヤーカップには音量の調節を兼ねたスライダー、そして外部音取り込み機能のON/OFFボタンが用意されている。スライダーは金属製で、他のボタン類と手触りで違いが感じられるため、ボタン操作に戸惑うこともないはずだ。

スライダーの上下操作で音声調節が可能

本製品はBluetoothでスマートフォンやPC等と接続できるほか、Sonosのサウンドバーシステムを経由してテレビ音声をワイヤレスで聴くこともできる。

まだ対応するサウンドバーがSonos Arcのみに限られるため、筆者の自宅環境では試すことはできていないが、いずれ所有するSonos Beam (第2世代)などにも対応デバイスが拡大予定なので楽しみなところ。

キャリングケースを撮影

カラーはブラックとソフトホワイトの2色。レビュー機はソフトホワイトカラーでケースの内側は緑でかわいい

持ち運ぶ際は、同梱のキャリングケースを利用するのが便利だ。「Sonos Ace」 は折りたたむことができないため、ケースは平たいタイプでやや大きめ。しかし、代わりに厚みはないので持ち運びしやすく、飛行機や新幹線の座席ポケットにもすんなり入って便利だった。

飛行機の座席ポケットは厚いものを入れると座席が狭くなるため薄いキャリングケースは地味に嬉しい

ケースの表面や内側は硬めのフェルト生地になっているので汚れがつかないか気になるところではあるが、ユニークなポイントとしてケーブルを収納するポーチをマグネットでくっつけておけるので、ヘッドホンを収納するときに邪魔になることはない。地味ながらグッドポイントだ👍

ケーブルを収納するポーチはマグネットでケースにくっつけておける

付属するケーブルはUSB-Cケーブルと3.5mm to USB-Cケーブルの2本

実際に装着してみた

「Sonos Ace」 を実際に装着してみて、まずは心地よい装着感に驚いた。

耳の周辺にあたるイヤークッションは、ヴィーガンレーザー仕上げの低反発素材でふんわりと柔らかく、まさに 「包まれている」 感覚になれる。そして、左右からの締め付け (側圧) は強すぎず弱すぎず。長時間つけていても痛みをほとんど感じることはない。

イヤーカップに関しても耳をすっぽりと覆うのに十分な深さがあるため、もしピアスやイヤリングなどのアクセサリをつけていたとしても、長時間の使用は十分に可能だろう。映画やドラマの視聴にうってつけだ。

左右のイヤーカップ部分にある各種ボタンは、凹凸がしっかりしている関係で手探りで触ってもボタンだとわかりやすく操作しやすい。装着感および使用感はかなり良い出来だと評価できる。

ただしひとつ気になったのが、ヘッドホンを首にぶら下げる際に、カップの中が外側を向いてしまうこと。ヘッドホンを平らにした状態にした際にイヤークッションを汚す心配がないというメリットがある一方で、外で使用する際にはすこしばかり格好が悪いかたちになってしまう。

おそらく、この仕様は室内で利用することをある種前提とした製品になっているためなのだろうが、屋外で多用することを検討している場合にはすこし注意かもしれない。

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音質について

「Sonos Ace」 は2つのカスタム設計の40mmドライバーをヘッドホンに内蔵しており、どの音域も正確で歪みのないサウンドを再現する。

「Sonos Ace」 の音はとても空間的だ。左右のスピーカーから音が出ているというよりは、頭の周りに適切にコントロールされた複数のスピーカーが設置されていて、それらから出ている音に囲まれているような感じ。ダイナミックヘッドトラッキングの恩恵もあるとは思うが、ヘッドホンを装着しているというよりは、音楽が流れているヘルメットの中に頭を入れているようなイメージだ。

音質は低音域から高音域まで全体的にフラットだが、中〜低音域に少しだけ寄っている印象。ボーカルなど中音域はとてもクリアで、アーティストの良さを感じやすい。また、高音域はシャカシャカしすぎないので、リラックスして音楽を楽しむことができる。

低音域はあまり強すぎず、高音域〜中音域とのバランスは良い。ただし、Boseのヘッドホンなどのようにどっしりと重みのある低音と比べるとちょっぴり軽めで、物足りなさを感じる人もいるかもしれない。

筆者は1日のうちに、色々な場面で音楽を聴いている。車や電車など移動中や、作業に集中したいとき、気分を上げたいとき、仕事を終えて一息つくとき……。これらの場面の中で 「Sonos Ace」 がもっともピッタリだった場面が、リラックスしたいときだった。どこかの音域が突出していないことから、終始落ち着いた雰囲気で音楽を楽しめる。個人的にはジャズやスローテンポな楽曲などとの相性がとても良いと感じた。

本製品の対応コーデックはSBCおよびAAC、aptX Adaptive、aptX Losslessで、ロスレスオーディオの再生も可能だ。ロスレスオーディオは、AptX Loseless対応デバイスとBluetoothまたはUSB-C接続することで利用できるほか、AppleデバイスとのUSB-C接続により、Appleロスレスも利用できる。細部まで忠実に再現された音を楽しみたい人にもオススメのヘッドホンと言えるだろう。

自然なノイキャンでコンテンツに没頭できる

「Sonos Ace」 は、アクティブノイズキャンセリング (ANC) とアウェアモード (外部音取り込み) に対応する。両モードは、右イヤーカップの下にある丸いボタンを押すことで簡単に切り替え可能だ。

「Sonos Ace」 のANCは、エアコンの空調音や電車、車、飛行機のエンジン音など、一般的にANCが得意とする継続的な低周波ノイズはかなりキレイに消せている印象を受ける。

たとえば筆者の自宅環境。作業部屋ではエアコンの空調音に加えて水槽の濾過装置のモーター音、冷蔵庫・ワインセラーの動作音が継続的に発生しているが、こうした家電製品のノイズをほとんど消されており、作業への集中度をかなり高めることができている。

ANCに対応したヘッドホンのなかには閉塞感を感じるヘッドホンもあるなか、「Sonos Ace」 はかなり自然にノイズを消してくれるため、とても快適。プレミアムクラスのヘッドホンのなかでもかなり高いレベルのANCを実現できていると感じた。

飛行機の中もANCのおかげで快適

さらに、本製品はパッシブノイズキャンセリングもかなりしっかりと効いていることから、自宅内であっても外出先であっても、いつも静かな環境で音楽を楽しめる。音楽の再生をひとたび始めれば、手元のキーボードの打鍵音やマウスのクリック音もほとんど聞こえなくなるので、少しくらいガヤガヤとしている環境であっても作業に集中することができる。

ただし、周囲の環境に応じてANCの効き具合をリアルタイムで調整する適応型ANCのような機能は 「Sonos Ace」 には搭載されていない。そのため、ノイズの状況が著しく変動する環境で使用する場合には、適応型ANCを搭載したヘッドホンにすこし劣るように感じた。

プレミアム価格帯の有名ヘッドホンと比べてみた

そして周囲の音を取り込む 「アウェアモード」 は、Appleの 「AirPods Max」 ほどしっかりと聞こえるわけではないものの、他社のプレミアム価格帯のノイズキャンセリングヘッドホンと同じくらいは聞こえている印象。外で利用する際のウィンドノイズもほとんど気にならなかった。

ただし、曲を流している状態でアウェアモードを使うと周囲の音を聞き取るのがすこし難しい印象を受けたので、周囲の音をしっかりと聞きたいのであれば、音楽の音量は若干下げておく必要がありそうだ。

空間オーディオ&ダイナミックヘッドトラッキングで高い没入感を実現

「Sonos Ace」 は空間オーディオに対応しており、Apple Musicなど対応するコンテンツにおいてリッチなサウンドを体験することが可能だ。

加えてダイナミックヘッドトラッキングにも対応するため、ユーザーの頭の動きに応じて音の鳴る位置が変わり、まるで映画館で映画を見ている、あるいはライブ会場で生のバンドの演奏を聴いているような感覚を味わうことができる。

上記のノイズキャンセリング機能や空間オーディオ、ダイナミックヘッドトラッキングなど、いわゆるプレミアムな価格帯のヘッドホンに搭載されている機能はほぼ網羅されているため、高い没入感のなか音楽を楽しむことが可能だ。

Sonosのサウンドバーとの連携について

「Sonos Ace」 にあって他社製品にはないもの。それは、Sonosの展開するサウンドバーシステムとの連携だろう。「Sonos Ace」 の最大の魅力とも言えるポイントだ。

「Sonos Ace」 は自社のサウンドバーと組み合わせて使うことで、Bluetooth経由で音楽を聴けるだけでなく、テレビで流れている音声をヘッドホンで直接聴くことができる。しかも、Sonosのサウンドバーのオーディオ品質で。

まず、そもそもの話としてテレビの音声をヘッドホンで、しかもDolby Atmosで視聴するにはいくつか条件を整える必要がある。対応機器同士を繋ぐことはもちろんのこと、ワイヤレスヘッドホンにDolby Atmosで音を届けなくてはいけない。

Sonosはその手法として、自社のサウンドバーにバイノーラルレンダリングとサラウンド音声の処理を任せてしまうことで、ワイヤレス接続環境においてもリッチな音響体験を可能にしたというわけだ。その際、本来であれば2chでしかないオーディオソースでも7.1.2chにサラウンドアップミックスし、より高い没入感を生み出すことが出来る。

また、上述したアクティブノイズキャンセル機能やダイナミックヘッドトラッキング機能も利用できるため、ヘッドホンを着けていないときと同じように音の出ている方向を意識しながらテレビを視聴できるというわけだ。

サウンドバーと 「Sonos Ace」 の接続にはWi-Fiを利用する。Wi-Fiを利用した音声の伝送といえば、AppleのAirPlayが真っ先に思いつくかもしれない。しかし、Sonos Aceの場合はおなじくWi-Fiを利用した仕組みではあるものの、サウンドバーとヘッドホンをポイントツーポイントの直接接続する仕組みで、もちろんAirPlayとの互換性はないためあくまでもテレビの音声をヘッドホンで聴くことを目的にした機能となる。

サウンドバー ⇆ Bluetoothの切替えはスライダーを3秒押し込むことでできる。切り替えはかなりスムーズで途切れたりすることはない

サウンドバーがあるのにヘッドホンを使うのはどんなシチュエーションが想定できるだろうか。Sonosは、この機能のユースケースとして、夫婦で映画を観ているとき、パートナーが途中で眠くなってしまったとしても、テレビの音声の再生先を 「Sonos Ace」 に切り替えることで、自分だけ映画の続きを楽しめる、と紹介している。

また、日本のような狭小の住宅環境では、Sonosのサウンドバーやウーファーの音をフルで発揮させられない場合もあるのではないだろうか。そんなとき 「Sonos Ace」 を利用すれば、映画の大迫力なシーンも余すことなく味わうことができる。

Sonosのサウンドバーに繋がっていればApple TVやFire TV、PS5やXbox Series X|Sのゲームの音声を 「Sonos Ace」 で再生することができる。なので、ハマっているゲームを夜中にこっそりとプレイ……といった用途にも使えるかもしれない。

もちろん、Sonosのサウンドバーを持っていないと利用できない機能になることから、利用できるユーザーは限定的となってしまう。だが、もしSonosのサウンドバーをすでに持っているのであれば、同製品を導入することで新たな選択肢を得ることができるはずだ。

このサウンドバーとの連携は、発売当初は 「Sonos Arc」 のみが対応するが、今後数ヶ月にわたるアップデートのなかでSonos Beam、Sonos Rayへ対応デバイスを拡大していくとのこと。

Sonos Arcの音声をSonos Aceで視聴している様子

また、2024年後半には、新機能 「TrueCinema」 が利用可能になる予定だ。同機能は、Sonos製品で利用できる 「TruePlay」 の延長のような機能で、「TruePlay」 が部屋の壁や家具などで起こる音の反射を測定して、その部屋における最適なサラウンド環境を再現するものであるのに対して、「TrueCinema」 はこのTruePlayの体験をヘッドホンを装着した状態でも利用できるというユニークなものだ。

具体的には、Sonos Aceに内蔵したマイクでサウンドバーから再生されたテストトーンを聞かせて、Sonos Aceに対して最適なレンダリング処理をした音声を伝送することで実現している。

現時点ではまだ正式には利用できない機能ではあるのだが、報道関係者向けのデモセッションで体験させてもらったところ、オフの状態とは音の聞こえ方が微妙に違うように感じた。とはいえ、筆者も体験をさせてもらった部屋の特性を完璧に理解できていたわけではないとは思うので、同機能については正式リリース後にもっと色々と試してみたい。

まとめ:Sonos Aceを使って感じた、良いところ。悪いところ

Sonos初のヘッドホン 「Sonos Ace」 は、Sonosらしい高品質なサウンドやSonos製サウンドバーとの連携機能など、他製品にはない、唯一無二の特長を持ったヘッドホンに仕上がっている。特にSonosが大事にしている、映画におけるサウンドの再現性については、サウンドバーと同じくらいしっかりと実現できていると感じた。

装着感も良好で、イヤーカップの中の色が左右で違っていて左右を一瞬で把握できたり、各種ボタンが直感的に操作しやすいなど、ユーザビリティにもこだわっており、ヘッドホンとしての純粋な使い心地はかなり良い。

一方で、本製品は特定のユーザー層を対象にした製品であることは考慮すべき点だ。通常のワイヤレスヘッドホンとして比較した場合、他のプレミアムなヘッドホンとは機能面で違いはやや少ないこと、価格が74,800円(税込)と高めであることを踏まえると、現状Sonosのサウンドバーを持っておらず、自宅や外出先で使うヘッドホンが欲しいという人には、よっぽどSonosのサウンドが気に入っているわけではなければ 「Sonos Ace」 を選ぶ必要はないだろう。

「Sonos Ace」 をオススメできるユーザーは、まずは自宅で普段からSonos製のサウンドバーに触れていて、Sonosのサウンドを気に入っていることが前提。その上で、自宅で家族など他の人と一緒に生活していたり、集合住宅に住んでいるなど、時間帯によってテレビの音に配慮する必要がある人は、「Sonos Ace」 によって満足できる結果が得られるはずだ。

筆者の場合はどうかというと、すでにSonos製品を自宅に導入しており、バランスの良く、クセの少ない素直なSonosのサウンドを気に入っていることから、「Sonos Ace」 は率直に良い製品だと感じている。Sonosの製品を愛用しているユーザーは、ぜひ同製品を試してみていただきたい。

Sonosレビュー
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