マイクロソフトの次世代ハードの小型モデル 「Xbox Series S」 が、今月10日にいよいよ発売となる。
本ハードはXbox史上最も小さい本体サイズを実現すると同時に、次世代ゲームハードのスピードとパフォーマンスを低価格で提供するモデルと紹介されている。予想を上回る価格の安さから、コストパフォーマンスを重視するユーザーなどから注目が集まっている。
今回マイクロソフトのメディア向けプレビュープログラムに参加することができた筆者は、評価用のXbox Series Sを先行で入手。一足お先に本ハードでのゲームプレイを体験することができた。
先月28日に開封レビューをお届けしたが、今回はいよいよ 「Xbox Series S」 のより具体的な性能に迫っていきたい。小さな筐体に最新技術がギュッと詰め込まれたXbox Series S。その実力について詳しくお伝えしたいと思う。
(機器提供:Microsoft)
Xbox Series Sのデザイン&スペックをおさらい
Xbox Series Sのデザインやスペックについては、すでにマイクロソフト公式などで広く紹介されているが、まだご存じない方のために簡単におさらいしておきたい。デザインについては当サイトでも開封レビューを公開しているため、気になった方はぜひこちらから確認していただければと思う。
Xbox Series Sの本体
Xbox Series Sは白を基調とした本体カラーや、本体上部に用意された円形の冷却用メッシュ穴、横置きにしたときの見た目など、先代のXbox One Sの雰囲気を強く感じるデザインが採用されている。
円形の冷却用メッシュ穴の中にはファンが搭載されていて、Xbox Series Sを起動するとファンが回っている音が微かに聞こえてくる。ただし音は限りなく静かで、あえて聞こうとしない限りはほとんど音を聞き取ることはできない。ファンの音が邪魔でゲームに集中できないということはないはずだ。
Xbox One SとXbox Series Sを比較
Xbox Series Sが従来モデルから大きく進化したのは、本体サイズの縮小化。発売当時はXbox One Sもかなり小さいと話題になったものだが、Xbox Series Sはさらにその上をいくコンパクトさを実現した。
具体的なサイズは6.5cm x 15.1cm x 27.5cmで、厚みは7cmもない。重量も1.93kgと軽く場所移動も楽々だ。このサイズ感で次世代のゲーミング体験が可能というのだから驚きしかない。
また、革新的な変化となったのが光学ディスクドライブの廃止。パーツとして比較的大型なディスクドライブがなくなったことで低価格化と小型化の両方を実現した。Xbox Series Sは高速化されたカスタムSSDの搭載などにより本体に保存したダウンロード版ゲームでも読み込みが速いため、下位モデルだからといって読み込みの遅さを心配する必要はない。
ディスクドライブは非搭載
背面側に集約されたポート類
本体正面には電源ボタンとUSB-Aポート、コントローラーをペアリングするための接続ボタンが搭載。背面にはイーサネットポート、USB-Aポート×2、HDMIポート、ストレージ拡張用スロットが搭載されている。
ストレージ拡張用スロットには専用の拡張カードを接続することで、最大1TBの容量を拡張可能。
Xbox Series Sは光学ドライブが搭載されていない関係でゲームデータによってストレージの空き容量が少なくなりがちだ。実際にユーザーが使用できるストレージ容量は364GBであるため、ストレージの拡張が必要になるユーザーも比較的多いかもしれない。ちなみにストレージ拡張用スロットに比べたら読み込み速度は遅くなるが、USB-Aポートに外付けストレージを接続してストレージ容量を増やすこともできる。
コントローラー
Xbox Series Sに付属してくるワイヤレスコントローラー
新型ワイヤレスコントローラーのデザインはこんな感じ。Xbox Series Sに付属してくるコントローラーは本体と同じホワイトカラーが採用されている。
中心部分に共有ボタンが追加され、Dパッド(十字キー)部分が十字から円形に変化した。また、コントローラーグリップの滑り止め加工がより深くなり、トリガーにも新たにグリップ加工が施されたことにより、操作性が向上している。ちなみに、従来と同様コントローラーは電池駆動式(単三電池2本)となっている。
今回もコントローラーは電池駆動式(単三電池2本)
コントローラーの変化で筆者が個人的に嬉しかったのは共有ボタンの追加。短く押すとスクリーンショット、長く押すとビデオクリップを即座に保存することができる。以前のXboxコントローラーではXboxボタンとYボタンを押すことで保存できたが、お世辞にも操作しやすいとは言えなかったため、これは大きな進歩と言えるだろう。
ちなみにビデオクリップはXbox Series Sの場合は最大1080pで最長1分間、もしくは720pで最長3分間保存できる。ただし外部ストレージと接続した場合においては最大60分まで撮影できるため、長いゲームシーンを録画したい方は別途外部ストレージ(USB 3.0/フォーマットはNTFS)を購入する必要があるだろう。
Xbox Series XとXbox Series Sの本体
ここからはスペックについて。Xbox Series Sの基本仕様・機能は上位モデルのXbox Series Xとほとんど変わらず、同じようなゲーム体験が可能だ。
たとえばカスタムSSDによるゲームの高速読み込みや、リアルタイムレイトレーシングによるリアルなビジュアル、複数のタイトルをシームレスに切り替える 「クイックレジューム」 機能などはXbox Series Sでも体験することが可能。
プロセッサ |
CPU GPU SOC ダイ サイズ |
---|---|
メモリとストレージ |
メモリ メモリ帯域幅 内部ストレージ I/O スループット |
グラフィック性能 |
ターゲットパフォーマンス HDMI 2.1 対応機能 |
サウンド機能 | Dolby Digital 5.1 DTS 5.1 Dolby TrueHD Atmos 7.1 リニアPCMまで対応 |
入出力 |
HDMI USB ワイヤレス イーサネット 無線用アクセサリ |
ただし、上位モデルと大きな違いが設けられているのが解像度。1440p@60fps(最大120fps)対応となっていて、4Kには高度なハードウェアスケーリングによる対応となっている。つまり、真の4Kで映像を出力することはできないということだ。
とはいえ、解像度などグラフィックに関する違いを除けば基本的には上位のXbox Series Xと同じゲーム体験ができるように作られていることもあり、十分に次世代のゲーム体験を楽しむことができると言えるだろう。映像の細部にこだわらなければ最強のコストパフォーマンスを誇る次世代ゲームハードとして活躍してくれるはずだ。
Xbox Series Sで次世代のゲームプレイを体験
Xbox Series Sでの実際のゲーム体験はどんなものなのか。多くの方が心配しているのが上位モデルのXbox Series Xと比べてどれほど違いがあるのかだと思うので、その点についても言及していきたい。
今回筆者はXbox Series Sで複数のタイトルを試遊してみた。『Forza Horizon 4』『Gears 5』『Minecraft』『Minecraft Dungeons』『DiRT 5』をテストしたが、このうちXbox Series Sに最適化されているタイトルは『Forza Horizon 4』『Gears 5』『DiRT 5』で、『Minecraft』『Minecraft Dungeons』についてはまだ次世代ハード向けの最適化が完了していない関係でXbox One版のタイトルをプレイしている。
筆者が検証したのはXbox Series Xの検証を行ったあとだったため、正直なところXbox Series Sは画質の面で大きく劣るんじゃないかと不安だった。しかし実際にプレイしてみたところXbox Series Sの映像は、Xbox Series Xのそれに大きく見劣りするレベルではなく、むしろ同じくらいかちょっぴり劣る品質でゲームをプレイできることがわかった。
たとえば『Forza Horizon 4』なら、イギリスの美しい四季を十分に表現できていて、車に当たる光の反射や雨の雫もかなりリアルだった。200km/h以上の高速走行してもカクつくこともなくXbox Series Xと同様に快適にプレイすることができた。同タイトル自体がもともとXbox One版の時点で高い映像クオリティを実現できていたというのもあるとは思うが、少なくともXbox Series SはXbox Series Xに負けず劣らずの表現ができていると評価できるだろう。
ただし、画面を本当に細かく見てみるとXbox Series Xの描画よりも幾分か劣る部分が見えてくる。参考例として、以下の動画2本を見比べてもらいたい。
これは『Minecraft Dangeons』(Xbox One版) のメニュー画面なのだが、中央で燃える火の粉の表現がXbox Series Xの方が豊かかつ滑らかだ。これに対してXbox Series Sの方は、Xbox Series Xのそれに比べるとやや滑らかさに欠けており、火の表現としてのリアル度では劣っている(どちらも4K/60Hzのディスプレイで検証)。
これはXbox Series X|Sへの最適化がなされていないせいである可能性もあるが、とはいえ『Minecraft Dangeons』だけでなく他のXbox Series X|Sに最適化されたゲームタイトルでも一部で似たような違いがごくたまにみられることがあることから、Xbox Series XとSeries Sの間にはやはり差は存在するということ。
そもそも解像度がXbox Series Xはネイティブ4K(+8K)、Xbox Series Sは4Kアップスケールで異なることもあり、わずかながらテクスチャの描写もXbox Series Xの方がパリッとしている印象を受けた。Xbox Series Sも決して画質が低いわけではなくXbox One Xに比べて進化しているものの、やはりSeries Xの方が一枚上手。
ゲームをこよなく愛するユーザーはこの辺りはかなり気にすると思うのだが、とはいえ一般ユーザー目線で言えばその違いは大したことのないレベルである可能性が高い。
映像にとことんこだわるタイプならやはりXbox Series Xを買うべきだろう。Xbox Series Xは最大4K/120Hzで動作できるため、映像品質ではやはりSeries Xの方が上だ。
とはいえ、前述したように実際のゲーム体験はSeries XもSeries Sもそこまで大きくは変わらず、(現時点のXbox Series X|Sに最適化されたタイトルに限定すれば) 正直どちらのハードでプレイしてもほとんど見分けがつかないレベルであることから、XboxのゲームタイトルをあっさりライトにプレイしたいのであればXbox Series Sでも十分と言えるのではないだろうか。少なくともフルHD/60Hzのディスプレイでプレイするならば、Xbox Series Sでも体験には変わりはしないと思う。
Xbox Series X|S向けに開発されている『Halo Infinite』
気になるのはXbox Series X|Sをメインターゲットとして作られたタイトルの間でどのような違いがあるかということ。今回のプレビュープログラムの中でこれらのハードに向けて開発されたタイトルは『DiRT 5』だけだったが、実際にプレイしてみたところ次世代ハード向けにも関わらずゲームの映像品質はXbox One向けタイトルと大きくは変わらなかったため、『DiRT 5』でXbox Series X|Sの性能の違いを推し量るのは残念ながらすこし難しかった。
クイックレジュームの真価を評価
ちなみにXbox Series Sでは、上位モデルのXbox Series Xと同様に 「クイックレジューム」 機能を利用することができる。ここまでは新ハードの画質に重きを置いて話をしてきたが、筆者は実はこのクイックレジューム機能こそが、Xbox Series X|Sの最も進化した点だと思っている。
クイックレジュームとは、複数のゲームを同時に起動させておき、ひとつのゲームからもうひとつのゲームに瞬時に往来できる機能。プレイしたところまでプレイ状況を保存してくれるため、別のゲームをプレイしたあとにすぐに元のゲームを再開することができる。これまでのゲームハードでゲームを切り換えるには、それまでプレイしていたゲームを終了する必要があった。
実際に使ってみると早い作品で5秒程度、長い作品でおよそ10秒程度でゲームの切り替えは完了する。これだけでも十分に驚きなのだが、さらにこの切り替えスピードの速さはほぼXbox Series Xと同じであることはさらに驚きだ。本来であれば上位モデルと下位モデルの差別化としてここに差が出てきてもおかしくないはずなのだが、Xbox Series X|Sの場合はそんなケチくさいことはせず、同じゲームスイッチング体験をすることが可能。
このクイックレジュームは一体どういう時に便利かというと、フレンドがオンラインプレイに誘ってきたときに自身がプレイしていたタイトルからすぐに切り替えられたり、横断的に複数ゲームをプレイする人にとって有効だろう。
ゲームの終了と起動を繰り返す従来のスタイルが当たり前だったからかこれまではあまり面倒には感じていなかったが、Xbox Series X|Sを使うようになってからはむしろこの機能がないとストレスに感じてしまうくらい、この機能はインパクトのあるものだった。
高速ロードで絶え間ないゲーム体験が可能
また、Xbox Series Sの起動・ロード時間も大幅に短縮されている。これまで数十秒〜1分かかっていたゲームの起動は、Xbox Series Sならば長くて1分、短いと20秒以下で完了していた。場面の切り替えに必要なロードは早くて3秒、長くても1分以内に抑えられている感じだ。
これらが当たり前になると、もはやゲームのプレイシーンで待たされることはほぼなくなる。一瞬の休憩をとる隙すら与えられないほどで、ユーザーは絶え間ないゲームプレイが可能だ。もちろん疲れたら適宜休憩して欲しいが、1日中ずっとゲームに没頭するくらいのゲーマーなら集中力を欠かさず、ストーリー開始から終了まで一気に遊び通せるのではないだろうか。Xbox Series X|Sの高速なロード時間とクイックレジュームは、ユーザーのゲーム体験を大きく変えてしまうだろう。
ちなみにXbox Series SとXのロード時間は、ややXbox Series Xの方が早い気がするが、時としてSeries Sの方が早く読み込みが完了することもあったため、両者に大きな違いはないと言える。
まとめ:コンパクトながら次世代のゲームプレイが可能なXbox Series X。どんなユーザーにオススメか
これらの検証から導き出した筆者の(現時点の)結論は、Xbox Series SはXbox Series Xと同じくらいのゲーム体験ができるということ。もちろん4K/120Hzの検証環境やXbox Series X|Sをメインターゲットにしたタイトル(『Halo Infinite』など)がまだないこともあり、まだ完璧に検証しきれているわけではないためXbox Series SおよびXの真価を評価できたわけではない気がしているが、当初筆者が懸念していたようなXbox Series Xとの性能差があるわけではないことを確認できたことから、少なくとも次世代のゲームプレイを体験をするにはうってつけのハードであることは理解した。
あとはどんなユーザーがXbox Series Sを買うべきなのか。レビュワーでありゲーマーでもある筆者ならやはり真の4Kで遊べるXbox Series Xを選びたいところ。その理由は少しでも高いグラフィックの中でゲームをプレイしたい欲求があるからだが、それ以外にも内蔵ストレージ容量が大きく保存しておけるゲームの数がXbox Series Xの多いからという理由もある。
ただし筆者は年間に多数のゲームをプレイするようなゲーマーで、一般的なライトゲーマーが筆者と同じ感覚であるとは思えない。1年に数本程度しかゲームをプレイしないならば、必ずしもXbox Series Xを購入する必要はなく、むしろおおよそ同じくらいかちょっぴり劣るくらいのゲーム体験ができるにも関わらず、2万円安く購入できるXbox Series Sが合っているのではないだろうか。
ただし注意していただきたいのが、Xbox Series Sには光学ディスクドライブが搭載されていないこと。内蔵ストレージ容量は購入後に増設することができるが、光学ディスクドライブの場合はそれができないため、昔購入した旧作を遊んだり、中古ソフトを買ってきて遊んだりといったことは不可となる。Xbox Series Sは、ダウンロード版のみで遊ぶことを前提としているユーザーに限られるということをぜひ頭に入れておいていただきたい。
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