「Touch ID」で指紋をごまかすことはほぼ不可能であると言っても過言ではないと思うのだが、Appleはさらなるセキュリティー面の向上を目指しているのかもしれない。
Appleは「Touch ID」の利用時に、パスコードの入力をユーザーに要求する条件を新たに2つ追加したことが明らかになった。
これまでより頻繁にパスコードを求められるように
今までは「Touch ID」の利用時にパスコードの入力が求められる条件として、
- 端末を再起動した直後の場合
- 指紋が5回連続で認識できなかった場合
- デバイスのロックを48時間以上解除していない場合
- 指紋の登録、もしくは指紋の削除をした直後の場合
- [設定]アプリの[Touch IDとパスコード]を開く時
- [設定]アプリ>[一般]>[機能制限]でパスコードの要求が「即時」に設定されている場合
の6つの条件が提示されていたが、MacWorldによると、これらの条件にさらに新しく2つの条件が追加されたようだ。今回追加された条件は以下の2つ。
- パスコードを使ったロックの解除が6日間されていない場合
- 「Touch ID」を使ったロックの解除が過去8時間されていない場合
Appleの広報担当によると、この2つの条件は「iOS 9」のリリース時から存在したとのことだが、これらの条件が書かれている「iOS Security Guide」は2016年5月12日に更新されていることから、最近になって追加されたもののようだ。
この条件が追加されているとなると、iPadやサブのiOS端末を家に置いて使っている人は、朝に仕事に行って夜に帰ってきた頃には「Touch ID」ではロック解除ができないようになっているということだ。いつも「Touch ID」で楽々ロック解除している人からすればちょっと面倒な手間が増えてしまったかもしれない。
今回Appleがこれらの条件を追加した背景には、先日AppleとFBIとの間で起こったiPhoneの「バックドア」問題があると思われる。
この問題は、FBIがAppleに対し、犯罪の容疑者が所有する「iPhone」のロックを解除するよう求めたもので、結局はAppleは要求に応じず、FBIが他社の協力を得てロックの解除に成功したことでこの問題は終了した。
だが、現状アメリカでは、「指紋によるロック解除」に関係する法整備は未だ整っておらず、「指紋認証によるロック解除」が「パスコードによるロック解除」と同等のプライバシーの保護になっていないという矛盾が指摘されているようだ。
アメリカの憲法には、誰もがパスコードの入力を強制することはできないとされているが、AppleとFBIが揉めた後、裁判所が女性容疑者に対し「Touch ID」によるiPhoneのロック解除を命じている。
犯罪の捜査は人間社会にとって非常に大事なもので、昨今のテロ過激化の影響でより一層厳重な捜査活動が求められている。ただ、個人の捜査には一定のプライバシー配慮とより慎重な捜査が必要なのも事実。
特に、アメリカの場合では「パスコードによるロック解除」と「指紋認証によるロック解除」との間には矛盾が生じている。これらの経緯から、個人のプライバシーを重視するAppleは、ロック解除の仕様を変更したのではないかとみられているが、正式な発表などはなされていないためその真相は分からない。
[ via MacWorld ]