これからのWi-Fiのスタンダードは 「Wi-Fi 6」 と 「メッシュWi-Fi」 。両者を組み合わせることで、自宅のどこにいても高速で快適なインターネットを楽しむことができる。この両者の規格を搭載したルーターはまだまだ数少ないが、Linksysの 「Velop MX5300」 であれば実現することが可能だ。
2020年3月、Belkin傘下のLinksysブランドから発売したVelop MX5300は、次世代高速無線LAN規格 「Wi-Fi 6 (IEEE 802.11ax)」 に対応したトライバンドメッシュWi-Fiルーター。最新のiPhone 11 ProがWi-Fi 6に対応したことで自宅Wi-Fi環境のWi-Fi 6への移行を検討していた筆者は、予約開始と同時にMX5300を1台購入。先代モデルの 「Linksys Velop (トライバンド)」 と組み合わせた運用を始めていた。
さらにこの度、Belkinからもう1台MX5300のサンプルをお借りすることができたため、先に購入していた1台と組みわせた合計2台でメッシュWi-Fiを構築し、Wi-Fi 6+メッシュWi-Fiの威力を実際に確かめることができた。筆者と同じくWi-Fi 6への移行を考えている方向けに、Linksys Velop MX5300の魅力をお伝えしたいと思う。
シンプルかつスタイリッシュな製品デザイン
まずはLinksys Velop MX5300の製品デザインをチェックしていこう。
LinksysのVelopシリーズといえば、真っ白な箱型の筐体に無駄な装飾がないシンプルかつスタイリッシュなデザインが採用されているが、MX5300もほぼ同じデザインを引き継いでいる。アンテナもきっちり筐体の中に収まっているため、部屋に置いていても存在を主張しすぎずグッド。メカメカしいルーターはつい見えない場所に隠してしまいがちだが、MX5300のデザインならテレビ台の脇に置いていても異物感はほとんどないだろう。
本体サイズは奥行11.4cm×幅11.4cm×高さ24.4cm。従来シリーズよりもひと回り以上大きくなっているが、これはWi-Fi 6の対応に加えて、効率の良い放熱のために従来より大きなヒートシンクを搭載する必要があったから。とはいえ、他社のWi-Fi 6対応ルーターよりはかなりコンパクトに仕上がっている。
重量は約1.6kgで決して軽くはなく、むしろ一般的なWi-Fiルーターから比較すると重めの部類となる。わざわざ言うほどではないと思うが、できれば安定した台などに置くのがベストだ。
本体背面には有線接続用の1ギガビット対応イーサネットポート(WAN×1 / LAN×4) が5つ搭載されている。ユーザーの要望からポート数が増え、さらにイーサネットポートのほかにUSB 3.0ポートが搭載されたことで、HDDなどを接続して共有ストレージを作れるようになった。
本体をひっくり返すと、セットアップ用パスワードやリカバリーキー、シリアルナンバー、MACアドレスなどが記載されている。リセットボタンやWPSボタンなどもここに搭載されているので覚えておこう。
「MX5300」の実力をチェック
ここからはLinksys Velop MX5300の実力をチェックしていくが、まずはMX5300が利用できるWi-Fi 6とメッシュWi-Fiシステムについて解説しておきたい。
Wi-Fi 6(802.11ax) は、前規格802.11acの次世代Wi-Fi規格。通信速度スループットが改善され、データ転送速度が30%向上、レイテンシは1/4となり、実質4倍以上のスピードで通信することができる。対応しているデバイスはまだ限られるものの、とはいえiPhoneやiPadの最新モデルはすでに対応済み。今後発売するデバイスの多くが同規格に対応していくだろう。
そしてメッシュWi-Fiシステムについて。メッシュWi-Fiシステムは、名前のとおりメッシュ(網目)状に張り巡らされたネットワークを提供するためのシステム。具体的にはメッシュWi-Fi対応ルーターを複数台購入(他メーカーの製品との混在は不可)、設置することでネットワークのカバーエリアを増やすことができる。
これまでのWi-Fiルーターも中継機など拡張製品を使うことで通信エリアを拡大することはできたが、メッシュWi-Fiの場合は複雑な設定要らずでネットワークを広げることができる。今回紹介しているLinksys MX5300についてはスマホ向けアプリ(iOS/Android)で設定ができる上に、専門的な知識がほとんど不要なため初心者でも簡単に環境を構築することが可能。増設もかなり簡単だ。
アプリで楽々設定可能
また、LinksysのメッシュWi-Fiシステムは複数の周波数帯の電波を利用することができるが、提供されるのはたったひとつのSSID。すべてのデバイスを同じSSIDに接続し、そのデバイスたちをどの周波数帯で通信させるかをMX5300が自動で振り分ける仕組みになっている。
大量のネットワークデバイスが家に置かれるようになった現代において、このスマートさは非常に有効だ。ちなみにLinksysによればMX5300に接続できるデバイス数は最大250個。同時に通信できるデバイスはMU-MIMOテクノロジーによって最大8台まで対応するとのことだ。
接続状況は本体上部のLEDランプで確認できる
MX5300はトライバンド仕様になっていて、最高5.3Gbps (2.4GHz:1,147Mbps / 5GHz:1,733Mbps / 5GHz:2,402Mbps) の通信速度を実現している。内部にはQualcomm製の2.2GHzクアッドコアプロセッサが搭載されており、従来のデュアルコアプロセッサからアップグレードされたことで処理性能が向上。また、通信チャンネルの細分化により広い通信範囲を実現。1台で190平方メートルをカバーする仕様だ。
さらに既存のVelopシリーズを組み合わせて使うことができる拡張性の高さも魅力的。筆者は 「Linksys Velop (トライバンド)」 をすでに持っていたが、同モデルとも接続してメッシュWi-Fiを構築することができた。後方互換性があることで、今まで使っていたルーターも無駄なく活用できるのはメッシュWi-Fiシステムの良いところだ。
実際に2台のMX5300を筆者の自宅に設置してみた。
以下は筆者の自宅の簡略図。1階と2階にそれぞれ無線ルーターを置ける場所があるため置いてみたが、どの地点でも高速なインターネットを利用することができた。メッシュWi-Fiを構築する前はお風呂など比較的電波が通りづらい場所やルーターから距離の通り場所では通信速度が低下することがあったが、MX5300によるメッシュWi-Fiシステムでは速度の低下を感じることはなかった。
筆者の自宅にはWi-Fiネットワークに接続するデバイスが常時70台近くあるが、そんな状況でも高速な通信が利用できたためMX5300の導入意義は十分にあったと思われる。
ちなみに接続するデバイスの中で、最も優先させて通信をさせるデバイスを3台まで選ぶことができる。これに設定されたデバイスは他デバイスに比べて優先的に高速なインターネットが利用できるため、設置後はぜひ設定すべし。筆者はiMac、MacBook ProおよびPS4 Proに優先度を割り振っている。これらすべてスマホアプリで管理できるため、部屋のどこにいても設定を変えられるのもMX5300の魅力のうちだろう。
まとめ
「Linksys Velop MX5300」 は次世代通信規格のWi-Fi 6に対応したメッシュWi-Fiルーター。今回のモデルからWi-Fi 6に対応したことで、iPhone 11シリーズなど同規格に対応したデバイスで高速通信を利用できるようになった。
さらに、複数のVelopを接続してメッシュネットワークを構築することで、家の隅々まで安定した通信を届けることができる。デザインもスタイリッシュであるなど、あらゆる点において優れたWi-Fiルーターだ。
今はまだWi-Fi 6に対応したデバイスが少ないことから、Wi-Fi 6対応ルーターを購入するのは時期尚早ではないかと考える方もいるかもしれない。しかし、最近のハイエンド端末は徐々にWi-Fi 6に対応してきていることに加え、いずれは同規格がスタンダードになっていくことから、いまMX5300を購入することは決して悪い選択肢ではないはずだ。決して安い製品ではないが、もし自宅のインターネット環境を快適なものにしたいなら、個人的にはMX5300がオススメだ。